赤ちゃんの保湿は本当に必要?
しっかり保湿していたのに、どうして肌トラブルになってしまったのでしょうか。上の子のときにはそこまで保湿をしなくてもトラブルがありませんでした。保湿にどれぐらい意味があるのか気になっています。
(お子さん4歳・7か月のママ)
乳児脂漏性湿疹は生後1~2か月ごろに頭と顔に皮脂が過剰に分泌されることで現れる
回答:馬場直子さん 乳児脂漏性湿疹は、生後1~2か月ごろに、一次的にホルモンの影響で皮脂分泌が高まることで現れる皮膚炎です。全身ではなく、頭や顔などの皮脂腺が多い場所だけに現れます。
毎日1回はせっけん成分で洗浄して保湿する
回答:馬場直子さん 乳児脂漏性湿疹の家庭でのケアは、洗浄と保湿になります。1日に1回はせっけん成分で洗浄して、保湿しましょう。頭や顔以外のところはわりと乾燥してしまうので、洗浄だけでなく保湿も大事です。分厚いカサブタのように固まっている皮脂も、保湿をして少し柔らかくしておくと、次に洗ったときに落ちやすくなります。
生後2か月ごろまでは、頭と顔の皮脂が過剰に分泌されるため、乳児脂漏性湿疹が現れる赤ちゃんは多いといいます。それでも、洗浄するだけではなく保湿をすることが、赤ちゃんの皮膚を守るために有効です。
スキンケアで改善しない場合は病院を受診する
回答:馬場直子さん スキンケアで改善されない場合は、病院を受診してください。場合によっては、薬を塗って早く治すことも必要です。
―― 「赤ちゃんの肌はデリケート」と聞きますが、どうしてですか?
細菌・ウイルス・紫外線などの有害な物質から体を守る機能が弱い
回答:馬場直子さん 赤ちゃんの肌はバリア機能が弱いため、デリケートだと言われます。バリア機能とは、細菌・ウイルス・紫外線などの有害な物質から体を守る働きで、赤ちゃんは構造的にも機能的にもバリア機能が弱いのです。 その理由の1つは、表皮が薄いことです。新生児は、大人の約半分ぐらいの薄さといわれています。2つ目は、赤ちゃんは水分の蒸発を防ぐための皮脂が少ないことです。 バリア機能が弱いので、ちょっとした刺激でも炎症を起こしてトラブルになりやすいのです。
生後3か月~思春期ごろまでは皮脂分泌が少ないので、保湿でバリア機能を強化する
回答:馬場直子さん 乳児脂漏性湿疹が落ち着くころ、生理的に皮脂分泌が高まるのを過ぎた3か月以降から、ニキビなどができる思春期が始まるころまでは、生涯で最も皮脂分泌が少ない時期になります。バリア機能が弱く、ちょっとした刺激でも炎症を起こしやすい時期なので、意識して保湿してバリア機能を強化することが大事です。
―― 肌にトラブルがなくても、毎日の保湿は必要ですか?
毎日の保湿が体全体の健康につながる
回答:馬場直子さん 必要です。毎日の保湿が、体全体の健康につながるとも考えられています。最近では「アレルギーマーチ」を予防する観点から、保湿が重要だといわれているのです。
アレルギーマーチ
アレルギーマーチとは、成長するにつれて食物アレルギーや気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎を次々と発症してしまうこと。アレルギー疾患は連続して現れることが多いといいます。実は、アレルギーマーチのきっかけとなるのは皮膚炎です。
例えば、食物アレルギーの場合、口からではなく、バリア機能が弱った皮膚から原因物質が入ることで発症することがわかっています。
特にアトピー性皮膚炎は、アレルギーマーチを引き起こすリスクが高いので注意が必要です。最近の研究で、毎日の保湿でアトピー性皮膚炎の発症リスクを抑えられることがわかっています。
研究に参加したのは、親やきょうだいにアトピー性皮膚炎の患者がいて発症リスクの高い118人の赤ちゃんです。この赤ちゃんをふたつのグループに分けて調査しました。
(出典:Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis(2014))
ひとつのグループは毎日1回以上、全身を保湿します。もう一方のグループは乾燥が気になるときにだけ、部分的に保湿をします。これを生後1週間から8か月間つづけて、2つのグループのアトピー性皮膚炎の発症率を比較しました。
その結果、毎日全身を保湿していたグループのほうが、3割以上アトピー性皮膚炎の発症率が低かったのです。
赤み・ぶつぶつ・ざらざらは皮膚炎のサイン、病院で受診を
馬場直子さん 保湿は大切ですが、保湿剤だけでは十分ではありません。少しでも赤みが出てきたり、ブツブツしていたり、触るとザラザラしたときは、乾燥だけではなくて皮膚炎が起きている状態です。保湿剤だけではよくならないので、病院を受診して、医師と相談しながら炎症に合った薬を塗ることが大事です。
ステロイド外用薬は医師と相談して適切な量と期間を必ず守る
馬場直子さん 薬のほとんどはステロイド外用薬です。ステロイド外用薬が怖いからといって、自己判断で量を減らしたり、早くやめたりするのは、絶対にしないでください。医師と相談しながら、適切な量と期間を守って、しっかり治してください。
りんたろー。さん(MC) ステロイドは最後の手段のような印象がありましたが、今はそうではないのでしょうか?
馬場直子さん むしろ最初の手段ですね。早く治して、それを維持することが大事なわけです。
―― アトピー性皮膚炎と診断されたら、アレルギーマーチは避けられないのでしょうか?
アトピー性皮膚炎の早期治療で食物アレルギーの発症リスクを抑えられる
回答:馬場直子さん アトピー性皮膚炎を放っておくと避けられないでしょう。一方で、最近の研究では、赤ちゃんの時期のアトピーの早期発見と早期治療で、その後の食物アレルギーの発症リスクを抑えられるということがわかってきました。 (出典:Enhanced early skin treatment for atopic dermatitis in infants reduces food allergy(2023))
肌トラブルがない状態を保つことが将来のアレルギー予防につながる
回答:馬場直子さん アトピー性皮膚炎が軽ければ、3か月の赤ちゃんから使用できる、ステロイド以外の少し弱い治療薬もできています。少しでも早く、軽いうちに診断されれば、弱い薬で治すことができるのです。早く治して薬も使いつつ、すべすべで赤みもないよい状態を保つことが、将来のアレルギーを防ぐ意味でも大切です。
丸山桂里奈さん(MC) ちょっとボツボツしていても、「保湿しとけば大丈夫かな」と思っていました。
馬場直子さん 保湿剤は予防薬で、治療薬ではありません。予防と治療をきちんと分けることが大切です。
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