自分のための時間をつくることにとまどいがある…

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2023/12/23

出典:すくすく子育て[放送日]2023/12/23[再放送]2023/12/28

番組のアンケートでは、ママ・パパのおよそ7割が「自分の時間を十分に持てていない」と答えました。なぜなのでしょう。

鈴木あきえさん(MC)

私も、自分の時間の大切さと、その時間を取ることの難しさを、親になって初めて感じました。
すくすくファミリー

朝4時ごろに起きて、子どもが起きてくるまでが自分の時間ですね。
すくすくファミリー

パパ/自分の時間を持てているほうだと思います。20~30秒のちょっとした時間でも、自分の時間と認識することで、意識的に息抜きをしています。例えば、ごみ捨ての帰りに外で深呼吸しながら伸びをすることがあります。積み重ねれば、1~2時間ほどになっていると思います。
ママ/2人目が生まれてから、自分の時間はほとんどなくなりました。専業主婦でずっと家にいますが、時間の作り方が下手かもしれないと、少し悩みます。ただ、友達との食事やマッサージなど、自分がリフレッシュするために子どもを預けるのはとまどいを感じます。
鈴木あきえさん(MC)

「自分が休むために子どもを預けることに抵抗がある」という気持ち、とてもわかります。


―― 大日向さん、柴田さん、みなさんの話を聞いていかがでしょう?

自分の時間を持つことへの外圧がなくなった一方で、内罰的な心理状態に

回答:大日向雅美さん

「時間の作り方が下手なのでは」「誰かに預けるのは罪悪感がある」と聞いて、胸が痛くなります。うしろめたさや、自分を責める気持ちは、人間の心理のバランスの問題だと思います。
かつては、「母となった女性が、自分の時間を欲しいと考えるのはよくない」という外圧が強くありました。今は、社会全体が「自分の時間は必要」と変わってきています。でも、外からの圧力が少なくなった分、逆に内罰的になり、自分自身で「それはよくない」と考えるなど、自分に制約をかけがちです。「一時預かりを使うには、それなりの理由が欲しい」と、自分で圧力をかけてしまうのはつらいですね。そんなに思い詰めなくてもいいときが、早くきてほしいと思います。

子どもを一時的に預けることで、育児ストレスが減り、育児の幸福感が上がり、不適切な養育行動が減る

回答:柴田悠さん

最近では、子どもを預けることで親子にどのような影響があるのか研究が進んでいます。2018年に発表された研究によると、余裕のない状況の親が子どもを預けた場合、子どもと少し離れることで心の余裕ができ、親のストレスが減るのです。子育ての幸福感も上がり、「子どもと一緒にいられて幸せ」「子どもとの触れ合いが成長になる」といった、ポジティブな気持ちも高まってくる。また、子どもにつらくあたってしまうような不適切な養育行動が減るといいます※1※1 出典:「保育所は幼児教育の場として子どもと親にどのような影響を及ぼすか?」東京大学 山口慎太郎ほか(2018年)

私は、自分の時間を持つことに抵抗を感じていました。「子どもとずっと一緒にいられるのは幸せ、自分の時間を持つことは甘え」と考えていたのです。でも、自由に動けるパパをうらやましく思い、イライラをぶつけてしまうことがありました。「もう何もしたくない」と思っているときに、パパは飲みに行ったり、仕事で沖縄にでかけたり。そんなことが積み重なってイライラが爆発しました。
驚いたパパは、私に「自分の時間を持つこと」を提案しました。パパは娘を連れて公園へ行き、私は子どもが生まれて初めて持つひとりの時間をカフェで過ごしました。何をするわけではなく、コーヒーを飲んでぼ~っとしていました。でも、時計が気になったり、子どもの写真を見て「早く会いたいな」と思ったり、子どものことが気になるんです。ただ、30分ほどの時間でしたが、そのわずかな時間でイライラが消え、明日からも前向きに頑張ろうと思う気持ちを取り戻せたように思います。パパも、ふだんの私に戻ったと言っていました。今では、パパの休みに合わせて定期的にひとりの時間を持つようにしています。
(お子さん1歳1か月のママ)
古坂大魔王さん(MC)

育児の最初のころは、「30分、ぼ~っとする」ことすらできないですよね。苦しいですよね。

自分の時間が持てないことにみんなで気づき、少しずつ持つことからはじめる

回答:大日向雅美さん

ママが得た30分は、何時間もの重みを持っていると思います。そのような時間を、本当に持ってほしい。まずは「自分の時間が持てない」ことをみんなが気づいて、5分、10分、30分でも時間を持つところからはじめましょう。時間の価値を改めて考えさせられました。
そのことに気がつけたのは、爆発したことがきっかけでしたね。それは大事なことだと思います。思いを思いのままに打ち明けて、30分以上の意味がある時間を持てたのだと、とてもうれしく思いました。
古坂大魔王さん(MC)

たしかに、爆発は大事ですね。私も妻に爆発されて変わりました。
鈴木あきえさん(MC)

私も、何度も爆発してきましたよ。

私生活を社会全体で守ることが大事

回答:柴田悠さん

夫婦で話し合って進めることができたのが、すばらしいと思いました。自分の時間を持つことの大切さを示す研究もあります。欧米18か国の中で、仕事と私生活(自分の時間)の両立を支援している国と、支援が乏しい国を比較したものです※2仕事と私生活の支援が充実した国では、社会全体で幸福感が高い

その研究によると、仕事と私生活の両立支援が充実している国では、子育てをしている人もそうでない人も幸福感に差がなく、社会全体で幸福感が高かったのです。

仕事と私生活の支援が乏しい国では、社会全体で幸福感が低く、子どもがいるとさらに低くなる

一方で、仕事と私生活の両立支援が乏しい国では、全体的に幸福感が低く、子どもがいるとさらに低くなることがわかりました。
私生活を社会全体で守ることの大事さを示す研究だと思います。
※2 出典:「Parenthood and Happiness: Effects of Work-Family Reconciliation Policies in 22 OECD Countries」Jennifer Glassほか(2016年)

こども誰でも通園制度

親が自分の時間を持つことが難しい中、国が本格実施を目指している「こども誰でも通園制度」が注目されています。この制度は、親の就労状況や理由を問わず、子どもを預けることができる制度です。モデル事業を行っている保育園を訪ねました。

仙台市にあるこの保育園は、通常の保育をしながら、定員の空きを利用して子どもを受け入れています。

朝9時、この制度を利用する親子が登園してきました。こちらのママは専業主婦で、現在は育児と家事に専念しています。「こども誰でも通園制度」は親の就労状況や理由を問いません。育休中や求職中、子育てに専念している人など、誰でも子どもを預けることができるのです。

対象は、生後6か月から2歳までの、まだ通園していない子どもたちです。親子の希望にあわせて定期的に利用することができます。

保育士

はじめての取り組みで不安もあり、在園児の中にモデル事業の子どもが週1~2回入ってきて、慣れてくれるのか心配でした。でも、今は子どもの順応力はすごいと感じています。何度か登園しているうちに、泣きながらでも親に自分から「バイバイ」する子もいました。ママ・パパからも「今まで家庭だけでは得られなかった成長を感じた」「自分の時間ができて助かる」と言ってもらえて、励みになり、役立っていると感じてうれしいですね。

実際にこのモデル事業を利用している親に話を聞いてみました。

〇自分が落ち着いて休める時間をつくれたことが大きいです。SNSで見てた、行ってみたかったランチの店にも行けます。
〇出身地を離れて周りに誰も知人がおらず、ずっと息子と2人だったので、とても不安な毎日でした。ここに預けるようになってからは、先生たちと話ができて、居場所が見つかった気がして、気持ちが楽になりました。一時的に子どもと離れますが、いい距離感ができて、子どもとうまく向き合えるようになったと思います。

まだ「こども誰でも通園制度」はモデル事業ですが、2024年の通常国会で関連法案が提出されます。2023年現在、制度の実施方針が検討されています。


親の心を守ることが、子どもを守ることにつながる

柴田悠さん

「こども誰でも通園制度」は、親の育児うつを予防するなど、親の心を守る上で大事な取り組みだと思います。親の心を守ることが、ゆくゆくは子どもを守ることにつながります。

保育士の労働環境を余裕のある状況にしていくことが大事

柴田悠さん

現在、保育士が不足している地域がまだまだあります。保育士をしっかり確保していかないと、現場である保育士や園が大変な側面もあります。保育士の処遇や配置基準を改善し、保育士の労働環境を余裕のある状況にしていくことが大事です。
親の心の余裕だけでなく、保育士の余裕も同じように大事です。余裕がないと、しっかりとした保育ができないのは当然だと思います。私たち専門家も、そういったことを政府に訴えていきたいと思います。

自分の時間、何をすればいいの?

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