小児がんの家族支援とは?
小児がんの家族支援に、どんな活動があるのでしょうか。四郎さん(15歳)の活動と、「こどもホスピス」を紹介します。
11年前、4歳のときに脳腫瘍を克服した四郎さんは、小学校3年生のときにある活動をはじめました。 レモネードを発売するチャリティイベントです。売り上げは、小児がんの治療を支援している団体などに寄付しています。活動のきっかけは、治療後の晩期合併症という後遺症など、大変なことをいろんな人に理解してほしいと思ったことだといいます。この活動は、元々アメリカの小児がんの女の子がはじめたチャリティで、日本でも多くの団体が同じような活動をしています。 さらに、四郎さんの家族は、小児がんの患者が支え合うための患者会を立ち上げました。新型コロナの流行後は、チャリティイベントの開催が難しくなり、月に1回オンラインで集会を開いています。みんなでゲームをしたり、情報交換をしたりしているそうです。同じ小児がん患児とつながれてたのしいといいます。 クリスマスの時期には、お世話になっている病院や施設の子どもたちに、プレゼントを届ける活動も行っています。この日、四郎さんが訪ねたのは、神奈川県にある「横浜こどもホスピス」です。 「こどもホスピス」は、小児がんなどの命に関わる病気の治療に向き合う子どもと家族が、ひとときでも治療を忘れて楽しく過ごし、笑顔を取り戻すための場所です。大人のホスピスとは違い、おだやかな最期を迎えるための施設ではありません。看護師や保育士の資格を持ったスタッフが常駐していますが、医療行為は行いません。予約制で、日帰り利用以外に、宿泊することもできます。 今は、コロナ禍のため1日1組限定の利用ですが(2023年2月現在)、本来は患者や家族同士の交流、地域の人たちに開かれたコミュニティの場所なのです。
こどもホスピスについて、田川尚登さん(横浜こどもホスピス代表理事)に話を聞きました。25年前、当時6歳の次女を小児がんで亡くされたそうです。
コメント:田川尚登さん 娘の闘病生活のあと、イギリスから世界に広がっている「こどもホスピス」を知りました。もし、娘の闘病中にこどもホスピスがあれば、もっと濃厚な家族の時間を過ごせたかもしれない。そんな思いから、こどもホスピスを作りました。子どもは、闘病中でも成長しています。遊びたい、学びたいという気持ちを持っています。こどもホスピスは、子どもの成長・発達を手助けし、濃厚な時間を過ごす場なんです。
―― よく「笑顔が見たい」といいますが、言葉の深さや輝きが違いますね。イベントの様子をみると、たくさんの笑顔があるのだろうと思いました。
コメント:田川尚登さん 病気のことを忘れる場所で、いろんな遊びをしたくなる工夫をしています。子どもたちは、ひたすら遊んでいます。親も含めて、家族ごとみんなが主役になって、遊んだり、笑ったりしています。
―― こういった民間のこどもホスピスは、全国にどのぐらいあるのですか?
コメント:田川尚登さん 現在、大阪と横浜の2か所しかありません。もっと増やしたいと考えています。まだ日本では、厚生労働省などに、こどもホスピス自体の窓口ができていないのが現状です。2023年4月に設置される「子ども家庭庁」の中に窓口を作ってもらえるように活動しています。
―― 民間でこどもホスピスを作ろうと思ったのはどうしてですか?
コメント:田川尚登さん 家族支援は、地域の課題だと考えています。国が「このような施設が必要だ」と示し、地域で問題を解決するのがいちばんです。こどもホスピス発祥のイギリスでは、50数か所の施設が、地域の支えで運営されています。きっと日本でも、地域で「何とかしよう」という思いが生まれれば、成り立つと考えています。 子どもが子どもらしい時間を過ごすことが、大切な時間になります。家族との時間を支えることを、みんなで一緒に考えて、その大切さを理解していただければと思っています。
―― 松本さん、こどもホスピスのような施設を備えた病院はあるのでしょうか?
小児専門の緩和ケアの医師が少ないのが問題
回答:松本公一さん 例えば、国立成育医療研究センターには「もみじの家」という施設があります。「もみじ」は小さな子どもの手をイメージしたものです。ただ、子どもの緩和ケア施設がある病院は少ないのです。問題のひとつは資金ですが、いちばんの問題は小児専門の緩和ケアの医師が少ないことです。
※緩和ケア:生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族の心と体の痛みやつらさを和らげ、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を向上させるアプローチ。
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