ことばを話すのが遅いかも。どうしたらいい?
息子が発するのは「なん語」ばかりで、「ダダダー」「ゴゴゴゴ」などをずっとしゃべっています。コップを渡すときに「はい、どうぞ」と言うと受け取り、「ちょうだい」と言うと渡してくれますが、ことばはありません。周りからは、「ママがいろいろ声かけないと」など言われてしまうこともありますが、ふだんから、目に入るものをことばにするなど、ことばにつながりそうな絵本や歌もたくさん試してきました。散歩のときは、車が通れば「くるま」と言ったり、家を指して「家、白い家」と言ったり、目に映るものは全部言ったように思えます。
そんな中で、ごはんを食べさせているときに、「イヤ!」と言われることがよくありました。おなかいっぱいで“もういらないよ”という意味だと思います。これまで、意思が伝わることばを話したのは「イヤ」だけです。どうしたらいいでしょうか。
(お子さん1歳6か月のママ)
そんな中で、ごはんを食べさせているときに、「イヤ!」と言われることがよくありました。おなかいっぱいで“もういらないよ”という意味だと思います。これまで、意思が伝わることばを話したのは「イヤ」だけです。どうしたらいいでしょうか。
(お子さん1歳6か月のママ)
対人的なコミュニケーションは育っている
回答:田中春野さん ほんとうにママは頑張って語りかけていましたね。「なん語ばかり」と言っていましたが、拒否を示す「イヤ」も、立派な意味を持つ単語です。また、「ちょうだい」「どうぞ」と言いながら、ものの受け渡しができていましたね。ことばはなかったかもしれませんが、対人的なコミュニケーションは育っていると思いますよ。
子どもの反応をみてから次のことばをかける
回答:田中春野さん よく「言葉のシャワーを浴びせましょう」と言われることがありますが、浴びせ過ぎはよくありません。ことばをかけたとき、子どもが反応する時間を少し待ってあげることが大事です。矢継ぎ早にことばをかけると、子ども自身が感じたり、考えたりする時間を持てず、逆に反応できなくなってしまいます。子どもの反応をみてから、次のことばをかけるとよいでしょう。
―― 同じような悩みを持つ親も多いと思います。どの年齢でどんなことばがあれば安心、といった目安はありますか?
ことばの出る目安
回答:田中春野さん あくまで目安ですが、1歳半健診のころには、意味のある単語が1語以上出ているか確認しています。また、3歳児健診では「お茶 とって」など、2語をつなげて話せるか、ことばの数が増えているか。4歳になると3語以上をつなげて話せるか、自分の名前が言えるか、専門の施設では確認します。
ことばの発達に個人差がある。子ども自身の成長をみる
回答:田中春野さん SNSなどには、子どもに関する情報があふれています。見れば見るほど他の子と比較してしまい、焦ってしまう気持ちはよくわかります。でも、特に1~3歳の時期は発達の幅が非常に広く、ことばの発達に関しても大きな個人差があります。他の子との比較ではなく、子ども自身の少し前と比べて、どれだけ成長したかをみてください。
―― それでも心配になったとき、親がチェックできることはありますか?
耳の聞こえを確認する
回答:田中春野さん まず、耳の聞こえを確認しましょう。耳がよく聞こえていない場合、ことばの発達に影響が出ることがあります。小さいうちは、耳の横で指をこすって、その音に反応するかを確認してみましょう。お子さんのうしろから名前を呼んで、振り向くかどうかでも確認できます。 もう少し大きくなったら、それぞれスマートフォンを持ち、大人のささやき声が聞こえているか確認する方法もあります。 聞こえを確認するときのポイントは、見た目で話していることがわからないようにすることです。子どもの視野に入らない場所に移動して、大人の口元は見せないようにしましょう。
―― ことばを促すような声かけのポイントはありますか?
発語を促す声かけのポイント
回答:田中春野さん まず、「ゆっくり・はっきり・短めに」に話しかけます。 そして「繰り返し」も効果的です。ことばは、繰り返し伝えることで理解しやすくなります。 また「モグモグ」「ブーブー」といった擬音語・擬態語は、子どもにとって聞き取りやすく、しゃべりやすい音がたくさん使われているので、取り入れてみてください。 「身体を動かしながら」の声かけもよいとされています。「よーいドン!」「3・2・1!」など、体を動かすタイミングで声かけすると、子ども自身の感情が動いて声が出やすくなるといいます。
―― 柴田さんは、ふだんから園でたくさんの子どもたちをみていると思いますが、ことばの出るのが遅いかもしれないと感じる子はいますか?
その子どもにとって必要なものからことばを獲得している
回答:柴田愛子さん ことばが遅いという子はたくさんいます。「4歳になってもしゃべらない」と言って連れてみえた方も数えきれません。 私は、子どもが成長しているとき、そこに必然性が関係していると感じています。お悩みをご相談いただいた1歳6か月のお子さんの「イヤ」ということばも、言わないとやめてくれないから「イヤ」を発したと思います。 「4歳でまだしゃべらない」と言っていた子の第一声は、友だちに言った「それ貸して」でした。最初は、何も言わずに子どもの群れの中にいましたが、子どもたちは親のように自分の気持ちを察してくれません。自分から発しないといけない。それで、粘土で遊んでいる子のところに行って「それ貸して」と言ったわけです。「ことばを使うと伝わりやすい、自分の思うようにいく」と体感したようで、その後、とてもおしゃべりな子になりました。ことばは、その子にとって必要なものから獲得して使っていくのだと思います。
気持ちが動いて伝えたい欲求がことばになる
回答:柴田愛子さん 子どもの気持ちが動いて膨らんでくると、「伝えたい」「わかってほしい」という欲求が出てきます。そこに、ことばが登場する。例えば、「これは、きれいだね」「おいしそうだね」と言って子どもの気持ちに共感していると、子どもは「うん、これ好きなんだ」と言いたくなるのです。
コミュニケーションが楽しいという経験をたくさんさせてあげる
回答:田中春野さん ことばだけではなく、視線や身ぶり・手ぶり、表情も立派なコミュニケーションの手段です。子どもをよく観察してみると、興味があるものに近づいたり、指をさしてみたり、いろんな反応をしています。大人が、その反応をひとつひとつ拾いながら、「人と関わりを持つことが楽しい」という気持ちを育ててあげましょう。「コミュニケーションすることが楽しい」という経験を、たくさんさせてあげることを大切にしてみましょう。
ことばが遅いかもという場合の相談先
それでも、「ことばが遅いかも」と気になる場合は、「かかりつけの小児科」や「地域の保健センター・児童発達支援センター」などに相談してみてください。言語聴覚士に相談したい場合は、日本言語聴覚士協会のホームページで確認できます。
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