外国にルーツを持つ子どもたちの保育
まずは、外国にルーツを持つ子どもたちが多く通う保育園の様子を見せていただきました。そこにはどんな工夫があるのでしょうか。
こちらは、10か国の外国にルーツを持つ子どもたちが通っている保育園「桜本保育園(神奈川県川崎市)」です。日本人と外国人を隔てることなく、多文化に配慮した保育を行っているのが特徴です。
例えばバースデーカレンダー。「おめでとう」をさまざまな国の文字で表記することで、子どもたちが自然と他国の文化に触れられるようにしています。
園にある絵本も、スペイン語や中国語など、いろいろな言語で書かれたものがあります。子どもたちは早いうちから、いろんな言葉に触れることができます。
給食では、月2回ほど、外国にルーツを持つ子どもたちの各家庭料理をみんなで食べています。韓国料理やボリビア料理、ブラジル料理、フィリピン料理など「にじいろメニュー」と名づけ、子どもたちに大人気です。
子どもたちは一緒に育つことで、世界にはいろんな文化があり、違いがあることを自然と学んでいきます。文字や名前、味付けが違うことが当たり前なのです。その中で好みがあっても、違うことがいけないこととは思いません。
運動会や発表会などのイベントでは、各国の民族衣装を着て踊ります。この日は、韓国の伝統芸能を披露しました。
さまざまな文化を体験することで、違いをありのままに受け入れ、その違いをすばらしいと感じる気持ちを育てています。「21世紀を生きていく子どもたちは、いろんな場所で生活する可能性があり、どこにいても、自分のアイデンティティを否定することなく、自分らしく生きてほしい」という思いがあるそうです。
ここで、園長の朴栄子さんに話を聞きました。
―― 保育園をここまでしていくのは大変でしたか?
朴栄子さん(桜本保育園 園長) 1980年ごろから、いろんな国の人たちがこの地域にも来ました。そこで、それぞれの文化をみんなが楽しめたら、と思ったのです。私が若いころには、異文化理解のためにチマチョゴリ(民族衣装)を子どもたちに着せると、日本人の保護者から、「朝鮮人に思われるでしょ」と言われていました。今は、日本人の保護者から「文化を知りたい」という要望もあり、イベントのときに民族衣装を着るような機会をつくっています。周りが変わってきて、続けてよかったと感じています。
―― 保育園の中では、いろんな言葉が飛び交っているのですか?
朴栄子さん(桜本保育園 園長) 基本的に、生活言語は日本語です。私自身も日本語しか話せません。もちろん、子どもたちは日本語以外の言葉を話す子もいます。保護者向けには日本語だけというわけにはいきません。そんなときは、外国籍のスタッフが寄り添えるようにしています。例えば、日本語で困ったときは、スタッフが一緒に過ごしたりしています。
コメント:汐見稔幸さん 幼いころに、いろんな文化があって、それぞれがそれぞれのよさを持っていることに触れる。そこが新しいですね。おそらく外国で暮らすことになってもうまく適応できる、その原体験になっていくと思います。日本のモデルのようになるのではないでしょうか。
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