小さく生まれた子に合った育児の見通しが欲しい
退院後は私・母・パパの3人で育児を始めましたが、小さい子のケアは予想以上に大変でした。このままでは全員が倒れてしまうと感じて、産婦人科に「何とか助けてもらえないか」と相談しました。その後、私はメンタルのサポートを受けるために入院。娘は乳児院で預かってもらい、母子ともに2か月間手厚いサポートを受けることができました。
4年以上たった現在、娘は元気に育っています。でも、当時のことを思い出すと、今でも苦しい思いがよみがえってきます。小さく生まれたスタートになった時点で、指標のようなものをなくしたように感じました。育児の目安や見通しがあったら違っただろうと思います。
(お子さん4歳7か月のママ)
病院にいる専門のカウンセラーや医療ソーシャルワーカーへ相談を
回答:安藤朗子さん まずは、自身で「SOS」を出されたことがすばらしいと思います。小さく生まれた赤ちゃんを家に連れて帰り育てる。その不安や緊張感は、とても大きいものです。このような場合、出産後は精神的にも余裕がなく、退院後の授乳や育児についての話を聞いても十分に受け止めることができなかったという話もよくあります。医療機関のスタッフも、そんなママたちの気持ちを受け取りながら、丁寧に説明をしていくことが大切だと思います。 また、総合病院や周産期医療センターには、専門のカウンセラーや医療ソーシャルワーカーなどの専門家がいます。育児の見通しやアドバイスがほしいときは、そのような方に相談するのもひとつの方法です。
同じ立場の親子と会うことで見通しが持てる
回答:安藤朗子さん NICUのある病院では、小さく生まれた子どもたちの同窓会や遊び会などの活動をしているところもあります。そのような活動に参加してみるのはいかがでしょうか。先輩のママ・パパたちから育児の情報を聞いたり、小さく生まれた子どもたちと会ったりすることで、将来の見通しが持てると思います。
通常の母子手帳の指標では、小さく生まれた子の発育とずれてしまう
回答:加部一彦さん 母子手帳は、出産予定日の前後に3000gぐらいの大きさで生まれてくる子どもの発育について書かれています。そのため、小さく生まれたり早産で生まれた子どもの場合は、その指標からずれてしまうのです。最近では「リトルベビーハンドブック」というものが各所でつくられています。母子手帳には、母子手帳のフォーマットがありますが、今後はそれにとらわれない、いろいろな形の手帳が充実していくといいですね。
リトルベビーハンドブック
リトルベビーハンドブックは、小さく生まれた子どもと、その家族のために作られた手帳です。通常の母子手帳とは異なり、身長は20cmから、体重は0gから記録できます。
発達に関する記録を「はい・いいえ」でチェックするのではなく、「できるようになった日」を書き込むようになっています。小さく生まれた子向けのさまざまな情報も盛り込まれ、先の見通しを持てるガイドブックとしても使えます。ほかにも、先輩ママ・パパの体験談や、子ども本人からのメッセージもあり、使う家族を勇気づけてくれます。
この手帳の原型を作ったのは静岡県の子育てサークルです。代表の小林さとみさん(子育てサークル「ポコ・ア・ポコ」代表)によると、「『はい・いいえ』ではなく、『いつ』できるようになったかを記録することで、少し遅れていても、ゆっくりだとしても、着実にできていく様子を家族みんなで楽しめる手帳にしたい」という思いだったといいます。
その思いに共感した、母子手帳の専門家の板東あけみさん(国際母子手帳委員会事務局長)は、県が予算を使えるよう働きかけました。いくら母子手帳が充実していても、立場が変われば中身がつらいものになると感じたからです。
静岡県のハンドブックをきっかけに、自分の住む地域でもリトルベビーハンドブックが欲しいという親たちも声をあげ始めました。杉村優子さん(長崎リトルベビーの会Lino 代表)は、「自分のときにリトルベビーハンドブックがあったら救われたかもしれない」と感じたといいます。
※特定非営利活動法人HANDSのホームページより(2022年9月時点)
こうした保護者の活動が実を結び、2022年度内には少なくとも32の道府県で、リトルベビーハンドブックが配布される見込みです。
リトルベビーハンドブック配布中(2022年8月現在)
静岡県、岐阜県、福岡県、広島県、愛知県、佐賀県、福島県、山梨県
2022年度内に作成予定
北海道、宮城県、茨城県、栃木県、埼玉県、神奈川県、新潟県、石川県、福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、鳥取県、岡山県、山口県、愛媛県、高知県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
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