小さなうそでも注意するべき?
長男(4歳)は、よく小さなうそをつきます。例えば、おもちゃの片づけを注意すると「弟が使っていた」と、うその言い訳をします。いつもは「そんなことないじゃん」のように軽く流していました。でも、見過ごせないうそを強めに注意したら、とても落ち込んでしまいました。それまで、「大阪までひとりで行ったんだ」といった、空想を楽しむようなうそでよく遊んでいましたが、それも言わなくなりました。注意すると落ち込む時間が長い子なので、そのつど注意すべきか、流したほうがいいのか悩みます。そもそも「うそ」と「言い訳」は同じなのでしょうか。
(お子さん4歳・5か月のママ)
(お子さん4歳・5か月のママ)
幼児期のうそに相手をだます意図はない
回答:松井智子さん 幼児期のうそに、相手をだますような強い意図はありません。自分が怒られるのが嫌で、そこから逃れたくて、言い訳のようなうそをつくわけです。相手をおとしめるようなうそではありません。お子さんの「弟が使っていた」といううそは、そのような言い訳と同じだと考えていいでしょう。
注意が逆効果になることもある
回答:松井智子さん 注意をしたほうがいいかどうかは、子どものタイプにもよります。叱られて萎縮するタイプの子には、逆効果になる可能性もあるのです。怒られることを避けるためのうそで怒られるのは、子どもにとって、とても嫌な状況です。
子どもがうそをついた理由を考える
回答:松井智子さん 叱ることが逆効果になる状況では、どうして子どもがうそをついたのか、何から逃れたいためにうそをついたのかを考えることが大事です。 例えば、「弟が使っていた」といううそは、「片づけをしたくない」という理由が考えられます。そうであれは、例えば「最近片づけがうまくなったよね。ママに教えて」のように声をかけて、子どもの気持ちを「やりたい方向」に向けていくことがひとつの解決法になります。
子どもが変わるチャンスは、自分が評価されたとき
回答:汐見稔幸さん 人間が態度を改めるのは、自分で「本当にそうだ」と実感しているときです。ポジティブな気持ちのときに、自分で変わろうと思えるのです。単純に、たくさん叱れば変わるわけではありません。自分が評価されたときが変わるチャンスなのです。例えば、きちんとできたとき、うそをつかず正直に言ったとき、そんなときに評価してあげることを丁寧に続けていきましょう。そこまで叱らなくても、言い訳のようなうそが減っていくと思います。
子どものうそは自分を守る手段でもある
回答:汐見稔幸さん 子どもは、自分を守るためにうその言い訳をすることがあります。ある意味では子どもが創造的な活動をしているときに、「それはダメ」と本気になって叱ると、せっかくの芽が伸びなくなってしまう可能性もあります。小さなうそは「またそんなこと言って」と軽く流して、正直に言えたときは「今日はきちんと言えたね」と評価してあげる。そのほうが、お子さんにとってはありがたいのではないかと思います。
子どもが空想を言っているとき、それが「空想」だと理解しているものですか?
大人にすることにこだわり過ぎないほうが、子どもはおもしろく育つ
回答:汐見稔幸さん 例えば、絵本では「キリンさんと話した」といったことがたくさんあります。子どもが、そのような物語の世界と現実とを区別しているか、混同しているのかについて、たくさんの議論がありますが、私は区別できているのではないかと考えています。 頭の中にもうひとつのリアリティがあって、そこではおとぎ話も現実味のある世界になっていきます。私たち大人も、例えば小説で体験できることで、現実とは違うことをはっきりと認識しています。 小さな子どもは物語と現実の区別がそれほどしっかりとはできていませんが、5歳ぐらいになると徐々に変わっていきます。そこで「大人の論理に切り替えなさい」としてしまうと、子どもが持っている「いいもの」をうまく伸ばせなくなる可能性があります。子どもを大人にすることにこだわり過ぎないほうが、子どもはおもしろく育つと思います。
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