不妊治療の悩み ― 仕事との両立が難しい
不妊治療と仕事の両立について、番組に寄せられた声を紹介します。
上司の治療への理解の欠如がつらい。「繁忙期までにめどはつくのか」など、悪気なく言われて、プレッシャーを感じます。
顕微授精は通院の回数も多く、仕事が続けられずに退職しました。理解のある職場なんて、ひと握りだと思います。
不妊治療をする中で初めて流産を経験しました。仕事は技術職で、「流産しました」となったときも、職場に男性しかいません。たまたま大型連休の時期だったからよかったのですが、ふつうは休んだほうがいいと思います。積み上げてきたキャリアや高額な治療費を考えると仕事をやめることはできません。
治療中であることを職場に伝えていますが、周囲に負担をかけていないか心配です。全力で仕事に取り組めず、うしろめたさがあります。両立の難しさのひとつに治療のスケジュールがあります。
黄色い部分が通院日です。高度不妊治療のため、ひと月に最低10日は通います。体の状態によって、診察日が突然決まることもあります。夜中の0時に採卵(※)のための、排卵を促すための注射を受けることが決まって、病院へ向かったこともあります。採卵や移植のためには休みが必要で、治療中に気持ちが悪くなることも、みなさんに知ってほしいと思います。
※採卵:卵子を採取すること
夜中の0時に病院へ行く必要があるのですか?
妊娠率が高くなるベストなタイミングを目指す
回答:笠井靖代さん 妊娠率が高くなるように、卵胞が育って、いちばん適した時期で採卵しようとします。同じように、育てた受精卵(胚)を子宮に戻す移植のときも、その方にとってのベストなタイミングを目指します。それでも、高い率で授かることができるわけではありません。できるだけよい条件をそろえるために、急に日程が決まる場合があるのです。自分でコントロールできない部分があるので、職場の上司や同僚の理解が、非常に大事になると思います。
どうしても上司に言いづらいときは、どうしたらいいでしょう?
職場の同僚や仲のいい人など、信頼できる人に話しておく
回答:松本亜樹子さん 仕事で関わりのある同僚や、違う部署で仕事上の関わりはないけど仲のいい方など、信頼できる人に話しておくことをおすすめします。誰かに話すことで精神的に救われ、何かあったときに味方になってくれるかもしれません。
治療と仕事の両立ができなくて退職をしたという女性は23%(※)、4人に1人になります。これを受け、厚生労働省では「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック」の作成などをはじめ、不妊治療に理解ある職場の環境整備を推進しています。2020年より、不妊治療に対するハラスメントも法律で禁止されています。
※2017年 厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」より。男女合計では16%。
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