いたずらに見える困った遊び、どんな意味があるの?
おもちゃでも遊ぶのですが、実際の調理器具などで遊ぶほうが楽しそうに見えます。ティッシュペーパーなどを出して遊ぶときも、目をキラキラさせて楽しそうです。危なくない限りはやらせてあげたいとは思うのですが、ティッシュを大量に出されるとちょっともったいないなとも思います。いたずらに見える困った遊びにはどんな意味があるのですか?
(11か月 女の子のママ)
(11か月 女の子のママ)
繰り返し取り組むことで、緩やかな階段を登るように発達していきます。
回答:汐見稔幸さん いたずらに見えるような遊びにも、いろいろな意味があるんですよ。 ティッシュペーパーを一生懸命引き出しているとき、子どもは、「引っ張って、こうやって抜くことができるんだ」ということがうれしくて、ずっと繰り返します。このように興味関心を持って十分に遊ぶことでさらに好奇心が刺激され、自分でいろんなことにチャレンジしていく主体性のある子に育つと言われています。 あることができるようになると、うれしくなって、そのことを何回も何回もやりたくなる。そのとき、脳の中では、「そのことができる」ということを支える回路が、まず少しできたわけです。そしてそれを繰り返しやることで、その回路がどんどん安定していきます。 子どもの発達には「縦の発達」と「横の発達」の2種類があります。 ・「横の発達」:少しできるようになったことを、もっとうまくできるようになるまで試行錯誤を重ねること。 ・「縦の発達」:できるようになったことを土台に、もう一段上のスキルを身につけること。新たなことへチャレンジ。 青が横の発達、赤が縦の発達です。 横の発達が十分だと縦の発達はスムーズになります。「もうこれはできるから、次にもっと難しいことに挑みたい!」という気持ちが生まれ、また新しいチャレンジ、「縦の発達」に向かいます。 こうして、緩やかな階段をのぼるように発達していくんですね。
飽きずにやり続けているのは、不思議なことへの探究心が働いているから。
回答:井桁容子さん ティッシュペーパーを何枚も引き出すのは、「おや、引っ張って取り出したのに、もう一回出てくるな」と、気づいているということです。「取ったはずなのにまだ出てくるぞ。どうしてかな?」と思っているのかもしれませんね。 子どもは、仕組みがわかったことはすぐに飽きてしまいます。飽きずにやり続けているのは、不思議なことへの探究心が働いているということなのです。
自分で考え工夫して、何かができるようになることが「学びにつながる遊び」。
回答:汐見稔幸さん 例えば公園に行ったとき、「ほら、ブランコはこうやって乗るんだよ」と大人が教えることもできますが、子どもが自分で、ブランコでどうやって遊ぶかを考えることもできます。 初めてブランコを見た子どもはきっと、「あれ、何だろう?」とまず思うでしょう。そして近づいていきます。座ろうとしても揺れるので、なかなかうまく乗ることもできない。なんとかして乗りたいと思って、自分で考え工夫して、どうすればうまく乗れるだろうかと試行錯誤することでしょう。 そんなとき、「何やっているの、こうやって乗るのよ」と教えたり、大人が乗せてしまっては、せっかく自分で試しているところを邪魔していることにもなるのです。いろいろと試す中で、子ども達は実体験を通して、「こうしたら揺れて怖いんだ」「こうしたら安定するんだ」などと学んでいます。そうしたプロセスを全部省略して、「こうしなさい」と結果だけを近道で教えてしまうと、確かに早くできるようになるかもしれませんが、そこでその子が得るものは少ないでしょう。 危険のない範囲で、子どもたちに試行錯誤をどんどんさせてあげること、そして何かができるようになること、何かについて知ること、そうしたプロセスの全てが「学びにつながる遊び」なのです。
赤ちゃんの驚きの能力
実は、赤ちゃんには大人には想像できない驚きの能力があるのです。
赤ちゃんの認知能力の専門家である小林哲生さん(大手通信会社研究員)によると、赤ちゃんは生まれながらにして数をある程度理解できるといいます。
動物は非常に数に敏感です。例えば、えさが多いものと少ないものがあるとき、多いほうを見分けられます。そのような動物が引き継いできた能力を、人間の赤ちゃんも持っているのです。直感的な数の把握能力を利用して、非常に幼い時期から数がわかるということかと思います。 (小林さん)
赤ちゃんは数を理解しているのか、この能力を調べるために、赤ちゃんが不思議だと感じたものをじっとみつめる行動“注視”を利用した実験を行いました。
まず、赤ちゃんにぬいぐるみを1つ見せます。
次に、カーテンを閉じてぬいぐるみを隠します。
カーテンの隙間から別のぬいぐるみを登場させ、そのままカーテンの後ろに隠します。
この後、カーテンを開けたときにぬいぐるみが2つではなく3つになっていると、赤ちゃんはじっと見つめる反応を示します。
この実験のように、1+1が3になっていると、赤ちゃんはその場面が不思議だと思い、じっと見つめます。それが“注視”という行動です。それと1+1が2のときを比べると、やはり赤ちゃんの様子に差が出るのです。通常のときは、当たり前のことが起こっているわけですから、じっと見つめません。 子どもが不思議に思っていることに興味を持って生活していただけると、子育てが今以上に楽しくなるのではないかと思います。 (小林さん)
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