今、幼児教育が変わろうとしているのはどうしてなのか、汐見稔幸さんにお話をうかがいました。
幼児教育が変わろうとしている背景
世界の先進国は、すでに幼児教育を大きく変えようとして動いています。そこには、3つの背景があります。
子どもをめぐる環境の変化
かつては、子どもたちは家庭や地域での「生活」の中から、いろいろなことを学んで育っていました。例えば、親の仕事の手伝いなどです。しかし、そのような経験が減少したため、どこかで生活から得る学びを補填しなければなりません。
AI(人工知能)普及、グローバル化
幼児期の子どもたちが社会を担うことになる20年後は、今とは違う社会になっているはずです。AI(人工知能)の普及や、新たな道具や技術が生まれることもあるでしょう。また、社会のグローバル化により、多様な文化の人たちと上手に付き合う必要がでてきます。そのため、さまざまな道具を使いこなす力や、グローバルな社会に適応する力の教育が必要になっています。
答えが見つかっていない問題・先の見えない社会
現代の社会は、環境問題や少子高齢化など、簡単には解決できない、いろいろな問題を抱えています。そういった問題に向き合っていくために、みんなで協力して新しい解決策を探っていくような「新しい知性」を育てていかなければなりません。
これら3つの課題に取り組むためには、幼児教育がいちばん大事ではないかと考えられ、多くの国が幼児教育に力を入れるようになりました。日本の幼児教育に関する法令の改定も、このような世界の流れに沿ったものです。
認知的スキルと非認知的スキル
文字や数など、身についていることがすぐにわかる能力を認知的スキルといいます。認知的スキルを幼児期の早い時期から急いで身につければ、大人になって優秀になるかというと、あまり関係がないことがわかっています。
一方で、非認知的なスキルは、好奇心、粘り強さ、気持ちを切り替える力のような、身についているかすぐには分からないが、生きていく上で大事になるスキルのことです。この基礎を幼児期に育てておくと、将来、勉強が行き詰ったときも「やり方を変えてみよう」と切り替えて進めることができます。勉強が伸びることにもつながるわけです。
認知的スキルが大事でないわけではありません。遊びなど、子どもが興味を持ったものに取り組むことができるだけの認知的なスキルは必要です。認知的スキルと非認知的スキルが支え合うことが大事になります。
非認知的なスキルは、かつて家庭や地域の生活の中で育っていましたが、今は子どもの生活環境が変わり、育ちにくくなっています。そのため、幼児教育で、重点を置いて育てることになったのです。
PR