今、保育園と幼稚園を一体化する動きが始まっています。それが、保育園と幼稚園、2つの機能をあわせ持つ「認定こども園」です。
認定こども園の特徴は2つあります。3~5歳の子どもは、保護者の働いている状況に関係なく、教育・保育を一緒に受けられること。地域の子育て支援の場であり、園に通っていない家族の支援も行うことです。
認定こども園とは、どんなところなのでしょう?
栃木県佐野市にある認定こども園「あかみ幼稚園」に伺いました。2010年に、幼稚園から認定こども園へと移行したそうです。
現在、この園に通っているのは、0~5歳児まで331名です。
午後2時までは、年齢別のクラスで過ごします。約半数の子どもは幼稚園と同じように、午後2時になると帰宅します。残った子どもたちは、おやつを食べたり、自由に遊んだりして過ごします。
また、保護者同士や保護者と園が、行事などを通して協力し合う体制を目指しています。
・この園では、どんな親でも係を担当することになっています。協力し合えて、顔見知りにもなれて、あったかいなと感じます。
・働き方をフルタイムから短めのパートに変えたのですが、そのままこの園に通えます。安心して働き方を変えられるところが、すごく良かったと思います。
この園は、子育て家族以外の地域の住民に対しても開かれています。園庭には、子どもたちに食文化を伝えるための畑があり、地域の高齢者がボランティアで農作物を育てています。
・子どもたちには元気をもらっています。自然に親しんで、これがジャガイモだ、これがサツマイモだと発見していると思います。売っている野菜しか見たことないでしょうから。
・子どもたちと触れ合うのは楽しいことです。
地域のすべての親子が、安心して生活できるための取り組みもあります。
家庭で子育てをしているママたちが親子で交流する会や、地域の親子が気軽に遊びに寄れるカフェエリアもあります。
園内には学童保育もあります。小学生が園庭で遊ぶことで、異年齢の遊びが伝承されています。
歴史的にみて、子どもが大人になるために必要な生育環境があったと思います。ただ、簡単に昭和の時代に戻れませんので、新しい形で、それを再生しなければなりません。認定こども園は、教育・保育をベースにしながらも、かつての地域コミュニティの力を新しい形でもう1回作り上げることができる、その拠点になれる場所だと思っています。
認定こども園が増えることのメリットは何でしょうか?
子育て支援の拠点として地域の要に
回答:汐見稔幸さん ヨーロッパのほとんどの国は、保育園と幼稚園の2系統をやめて、1系統にしています。日本では、認定こども園一本に変わってきています。 途中でやめてもいいし、親が働いていても、働いていなくてもよいというように、自由度が増してきています。少しずつ自由度の高い幼児教育施設が増えていけば、保護者は利用しやすくなります。 ただし、違うものを一体化させるわけですから、それなりに課題はあり、それらを解決していかないといけません。 もうひとつ、認定こども園は、子育て支援が義務になっています。保育園・幼稚園では努力義務です。地域に根ざして、子育て支援の拠点になっていかないといけない。そういう意味では、新しいモデルになると考えています。
いろんな人たちが子育てに貢献できる社会に
回答:大豆生田啓友さん アフリカの古いことわざに「子どもひとりを育てるには、村中全員の力が必要」という言葉があります。今の子育て環境は、そうではありません。親だけが向き合って「私が頑張らないといけない」と思ってしまう環境です。 保育園・幼稚園があるだけでも、とても大事なことです。その上に、いろんな親たちも関わってくる、地域の人たちも関わってくる。これからは、いろんな人たちが関わることが大事になってきます。 保育園・幼稚園が迷惑施設だと言われる方もいますが、その方もまた地域の中で孤独なのだと思います。いろんな人たちが子育てに貢献できる社会をつくっていくことが、子どもにとっても、高齢者にとっても、いろんな親にとっても、いいことだと思います。 認定こども園だけの話ではなく、保育園や幼稚園も同じように変わってきていると思います。
すくすくポイント
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