育児の最難関とも言われる赤ちゃんの「夜泣き」にスポットを当て、夜泣きの原因やさまざまな対処法、夜泣きの歴史などについて考えます。
今回はまず、「夜泣き」について考える前に、赤ちゃんがどんなパターンで泣いているのかを見ていきましょう。
榊原洋一(さかきはら よういち) お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授 1951年生まれ。小児科医。専門は、小児科学、小児神経学、発達神経学、国際医療協力、育児学など。著書、訳書、監修書多数。
第1回 泣き虫赤ちゃん、なぜ泣くの?
夜中に突然火がついたように泣き出し、パパやママを疲労困憊させる赤ちゃんの夜泣き。
どうして泣くの?なぜ泣き止まないの?昼間はあんなにご機嫌だったのに・・・・・・夜泣きは、赤ちゃんのことが最も分からなくなる瞬間です。
そこで、すくコムでは、育児の最難関とも言われる赤ちゃんの「夜泣き」にスポットを当て、6回に渡り、夜泣きの原因やさまざまな対処法、夜泣きの歴史などについて考えます。
夜泣きで今まさに苦しんでいるママも、そうでないママも、育児をリラックスして考えられるようになるヒントが満載ですよ。
赤ちゃんはなぜ泣くの?
ママのお腹を離れると、まずは「ふぎゃー」と泣くことから始まる赤ちゃん。
赤ちゃんは泣くのがお仕事、という言い回しもあるくらい、赤ちゃんと「泣き」は切っても切り離せません。
赤ちゃんはどんな気持ちで泣いているのでしょうか?
なぜ泣いているのでしょうか?
この疑問、実は最新の科学をもってしても解明することがなかなか難しいようです。
しかし、いくつか泣きのパターンがあるようだということは徐々に明らかになってきています。
「夜泣き」について考える前に、今回はまず、赤ちゃんがどんなパターンで泣いているのかを見ていきましょう。
赤ちゃんの泣きパターン
赤ちゃんが泣く理由は、月齢によっても違いますが、いくつかのパターンに分かれています。
「痛い」「苦しい」
注射をして痛かった、お腹が痛い、暑い、寒いなど、物理的に「苦痛」を感じているとき。
これが一番単純な泣く理由と言えます。かん高く火がついたように泣くので、こういう泣き方の時は、早めにケアしてあげましょう。
「眠い」
赤ちゃんは眠くて泣くこともあります。寝ぐずりと言われています。
この場合は、泣いてぐずった後に眠ってしまいます。
一声大きく泣き、息を吸って、また泣くというようなピッチとパターンを繰り返します。
「お腹がすいた」
お腹がすいていて泣くこともあります。
おっぱいやミルクを飲むと泣き止むときは、この理由が考えられます。
エーン、フェーン、などいろいろなパターンの組み合わせで泣くことが多いようです。
「おしっこが出た」「ウンチが出た」
排泄にともなう独特の感覚でビックリして泣いているようです。
「おむつが濡れて気持ち悪いのかな?」というのは大人の感覚で、実際おむつが汚れていてもけろっとしている赤ちゃんもいるようです。
「抱っこしてほしい」
どんな赤ちゃんにも共通しているのは、抱っこされたり、体に触られるととても快感を感じるということ。
反対に、「分離不安」といって、一人で置いておかれると不安になるようです。
そのため、抱っこしてほしい時に泣いていることも考えられます。
心細げに寂しそうな泣き方をしていたら、それは「抱っこして!」の合図なのかもしれませんよ。
ご紹介したものは、きっと赤ちゃんのいるパパ・ママだったら、経験的に想像がつく「泣き」ではないでしょうか。
ただし、「泣き」のパターンは十人十色、それぞれ違うのが当たり前。
だからうちの子はこんな時にこんな泣き方をする、ということをよく観察して覚えておくと、お世話がスムーズになるかもしれませんね。
理由の分からない赤ちゃんの「泣き」
比較的大人でも想像がつくような「泣き」だけでなく、赤ちゃんにしか分からないような、原因不明の泣きがいくつかあります。
コリック、黄昏れ泣き
2~4、5か月の赤ちゃんによく見られる泣きのパターンで、夕方から夜にかけての時間帯に泣くのが特徴です。
お腹もすいていないし、眠くもなさそう。
しかしつらそうに泣くので、欧米では一時期「お腹が痛いんじゃないか」などと考えられていました。
現在でも、このコリックの原因は分かっていません。
赤ちゃんは、このように生物的なリズムの中で泣く時期があるようです。
運動泣き
こちらもやはり原因不明で、どんなに手を尽くしても止まない泣きです。
まだ手足を動かせない赤ちゃんにとって泣くという行為は、胸郭を広げ、肺に空気を送り込むための呼吸のエクササイズの時間でもあるようです。
泣くことで運動をしているんじゃないか?ストレスを発散しているのかも?など推測もされますが、本当の理由はよく分かっていません。
赤ちゃんの泣き声のよくできた仕組み
これまでご紹介したように、赤ちゃんが泣く理由は、大人が想像できるものから原因不明なものまでさまざまあるようです。
どちらにしろ泣き声は大人にとって正直、うるさいものですよね。
お世話をしているパパ・ママはこれまで天使だった赤ちゃんが急に泣き出した途端、「うちの子、泣かなきゃいいのに」なんて、気が重くなることもあるのでは?
しかし、赤ちゃんの泣き声はわざわざうるさく聞こえるようにできているのだともいわれています。
例えば、もしも赤ちゃんの泣き声が子守唄のように心地よいものならば、親は赤ちゃんに注意を向けず、その子は死んでしまうかもしれません。
「うるさい」「泣き止ませたい」と思うからこそ、親は赤ちゃんに近づき、いろいろ手を尽くして、結果的にお世話することになるわけです。
親が泣き声をうるさいと思ったり、不快だと思うのは、人間の進化の過程で組み込まれた、よくできた仕組み。
パパやママは、泣き声を聞くとイライラしたり、不安な気持ちを駆り立てられて当然だし、元来そういうふうにできているのです。
訳も分からず赤ちゃんに泣かれると、パパやママはおろおろして、何がいけなかったんだろうか?どこか痛いんだろうか?と精神的にも肉体的にもヘトヘトになってしまいます。
しかし、泣きの中には原因不明のものもあり、それは進化の過程の中で出現してきた「生き抜いていくための仕組み」だと知れば、「気長につき合ってあげようかな」とゆったり構えることもできるのではないでしょうか。
PR