丸山桂里奈の1日保育士体験 完結編
前編では、子どもたちの予期せぬ事態にも柔軟に対応する、保育士のプロの仕事に感心しっぱなし。学びあり、涙ありの丸山桂里奈さんの保育士体験、完結編です。
専門家: 大豆生田啓友(玉川大学 教授/乳幼児教育学)
完結編では、昼食後から1日の終わりとなる保護者への引き渡しまでをお届けします。
0時45分 昼食終了
みんなで「ごちそうさまでした」をしたあとは、食器を片づけます。
それだけでなく、椅子と机も自分で掃除、歯みがきまでが食後のルーティンです。
このような保育園でしていることを家でもしているようで、保護者から「上着も自分で着たりできるようになっている」という声があるそうです。
食事のあと、担任は交代制で1時間の休憩をとります。カリナ先生も一緒に休憩して、おしゃべりしました。
2時 自由あそび
休憩から戻り、自由あそびの時間です。ここでも子どもたちに「今からお部屋で好きな遊びをする時間にする?」と問いかけます。
すると、「塗り絵!」と動き始めた子どもたちがいました。「一緒に塗り絵しよう」と誘われるカリナ先生。
そこで、ほかの子にも「動物で一緒に遊ぶ?」と誘われたカリナ先生は、「遊びたいね」とこたえます。2人の子どもの誘いに「うん」と言ってしまいました。どうすればいいのでしょう。
先生に相談すると「両方遊ぶようにしています。どっちかを先に遊んだり」と教えてくれました。
まずは、動物遊びをしたい子に「ちょっと塗り絵をしてくるから、待っててね」と伝えます。すると、「塗り絵できるよ」と言ってくれて、一緒に塗り絵をすることになりました。
みんなが塗り絵をしていると、先生はパソコンの前へ。これからブログを書くそうです。保護者に子どもの姿を伝えるために、言葉だけではなく活動中に撮っていた写真と共にブログで見てもらうのです。
家で保護者と子どもがブログを一緒に見ることで、会話のきっかけになったり、子どもが話していることが、より具体的に保護者に伝わりやすくなったりします。
「何をしていた」だけではなく、「どう考えてしていたか」「その経験で何ができるようになったか」など、担任だからこそ感じる子どもの成長と共に、毎日ブログで発信しています。
コメント:りんたろー。さん(MC) 保護者にはとてもうれしいブログですね。
コメント:大豆生田啓友さん 園の中のことは保護者から見えないので、ブログなどで様子を伝えることは大事です。子どもたちがどんな経験をしていたか、担任の先生はきちんと見ているのです。
しばらくすると、動物で遊びたがっていた子が動物遊びを始めました。一緒に遊ぶと約束して30分たっています。でもカリナ先生は、一緒に塗り絵で難しい状況です。
先生に相談してみると、子どもに「時間決めてもいい?」「時計の針が10、11になったらお片づけだから、8まででどう?」と聞いてくれました。こういうときは、時計や時間を使うそうです。
コメント:大豆生田啓友さん 「これならどう?」と聞くと、子どもは自分で決めてくれますよね。
約束の時間になったら、3人で動物遊びです。「それサメじゃないよ」「クジラだよね」と話す子どもたち。「よくわかってるね」と感心するカリナ先生。その日の昼食とつながっていました。
自由遊びから1時間が経過しました。先生が「かえで組さん、見て! 今、何時?」と時計を指さすと、子どもたちが「3!」とこたえます。「3時です、ということは…?」と続けると、子どもたちはおやつの時間になったことに気づきました。
子どもたちの「おやつ食べたあともまた遊ぶ」という声に、先生は「落ちているオモチャは、踏んじゃったらどうなる?」と聞きます。「痛くなっちゃう」と返事があったので、「痛くなっちゃうから、落ちてるのだけ入れてください」と伝え、片づけが始まりました。メリハリをつけて、散らかしっぱなしにしません。
3時10分 おやつ
この日のおやつは豆腐のパンケーキです。カリナ先生も「もちもちで、おいしい!」と、子どもたちと一緒におやつを食べました。
「ごちそうさまでした」のあとは、食器の片づけなど、昼食のときと同様のルーティンを欠かしません。
3時30分 工作活動
3時30分、工作活動を予定していた時間になりました。
先生は、自由遊びをしていた子どもたちに「かえで組さん見て」「何に見える?」と自分の工作を見せます。すると、「金魚!」「タコ?」と声があがります。
続けて「みんなだったら何作りたい?」と聞いてみます。「恐竜!」という声に、先生が「恐竜! やってみる?」と言うと、子どもたちから「やるやる!」とかえってきました。
自由遊びを無理にとめず、興味を引かせて自然と工作が始まりました。興味を持たせてから始めることで、工作に集中できるのです。
今日の工作は「ちぎり絵」。「のりを使う」「ちぎる」など、ものを作る観点もありますが、子どもたちが自分の考えを模索しながら行う個々の表現を大切にしているそうです。
大人が見て感じることと、子どもたちが作っているものは違うことがあるので、例えば、どういうものを作っているかで話を広げていきます。
カリナ先生も、子どもたちに作っているものについて声をかけます。
みんながひと通り作品を作り終えたところで、先生が「みんなで何を作ったか発表しない? 見せあいっこしませんか?」と提案すると、子どもたちも大喜び。「じゃあ、急いでお片づけしよう!」と声をかけ、みんなで片づけが始まりました。
コメント:りんたろー。さん(MC) このタイミングで片づけすれば、発表があるから楽しみながらできますね。
発表は、先生から始まりました。「金魚と、小さいおさかなを作りました」と説明すると「ちょうに見える」という声も。「いろいろ見えるよね」とこたえます。
子どもたちの発表が続きます。恥ずかしくてなかなか発表できない子は、何を作ったのかを教えてもらって、先生がみんなに伝えてくれました。
コメント:りんたろー。さん(MC) 先生が、「先生が言っていい?」「自分で言う?」と子どもに聞いて、選択肢をあたえるのは、恥ずかしがっている子の気持ちを尊重していますね。
コメント:大豆生田啓友さん 言葉にしにくい気持ちも「どうする?」と聞きながら代弁する。保育者は子どもの理解者ですよね。「〇〇ちゃんも、今こういう気持ちだよね」と、プロは徹底して子どもの気持ちを大事にします。子どもは自分の気持ちに寄り添ってくれる大人を信頼します。保育者が理解することで、子どもの「ここでは自分らしくいられる」という心の安全基地になる。自分をよりよく出せて、自己肯定感や自尊心、自分で何かを夢中でやり抜く力が育っていくのです。
ほかにも個性あふれる作品ばかり。カリナ先生が作ったのは「紅ショウガ人間」でした。「紅ショウガをたくさん食べて、たくさん水を飲んでいる人」だそうです。
子どもたちは、「紅ショウガ」が分からず、少し困惑していたのかも。
発表会が終わるとお帰りの会。1日保育士体験はそろそろ終了です。
4時30分 お帰りの会
お帰りの会が始まりました。先生が「今日は誰が来てくれた?」と問いかけると「カリナ先生!」とこたえる子どもたち。
「カリナ先生に、1日遊んでもらったよね。みんな、どうだった?」と聞くと「楽しかった! ごはんも一緒に食べた!」とこたえます。いちばん楽しかったのは、走ったことだったようです。
カリナ先生は、走るのも、みんなと鬼ごっこするのも、砂遊びも、ダンスも、ごはんを食べたことも、ぜんぶが楽しかったそうです。
みんなと一緒に遊んだことが楽しすぎて、泣いてしまうぐらいでした。
カリナ先生と子どもたち、お互いに「ありがとう」を伝え合います。
最後は「かえで組さん、さようなら」のあいさつで、お帰りの会が終わりました。
保護者への引き渡し
お迎えの保護者への引き渡しを先生と一緒にすることになりました。保護者がくると、「おかえりなさい!」と声をかけます。
先生は、その日の子どもの様子を保護者に伝えます。カリナ先生も「他の子にもたくさん話しかけていましたよ。私まで元気になりました」と伝えました。保護者も「よかったね、うれしいね」と笑顔に。「バイバイ、また明日ね、さようなら」とあいさつをして見送ります。
そのあとも、次々とお迎えに対応します。カリナ先生は子どもたちの様子を伝え続けました。園でしたことを保護者に説明すると、安心した表情になってくれるのです。保護者が園内の様子を見れない分、保護者とのコミュニケーション、会話を大切に心がけているといいます。
丸山桂里奈さん 子どもたちが「明日また来たい」と思うぐらい、楽しかったのがわかります。子どもの笑顔を見られるのがいいし、楽しかったです。就職したいですね。
5時30分 保育士体験終了
これで、保育士体験も終了です。丸山桂里奈さんに保育士体験の感想を聞いてみました。
丸山桂里奈さん 成長や生きる力など、子どものころから生きていく上で大事なことの土台を作っていくんですね。みんながどんな大人になるのか、楽しみになりました。園で大事にしてた「思いっきり笑う、遊ぶ、食べる」はその通りで、1日の中で感じることができました。私も子どもに対して伝えていきたいと思います。
1日保育士体験のあとで
丸山桂里奈さん(MC) 本当に疲れましたが、やりきったし、先生と子どもの関係性や大事なところを細かく見られて、保育士体験をしてよかったと思いました。
りんたろー。さん(MC) 最後のお迎えのときに、カリナ先生が「おもちゃを譲ってあげてて、優しい子だと思いました」と伝えたときは、子どもも「これがいいことなんだ」「ママも先生も喜ぶ」とわかって、次の行動につながっていきますよね。いい時間だと思いました。
大豆生田啓友さん 保護者は「うちの子が今日1日でこんなすてきな姿になった。いい経験をしていたんだ」と感じて、とても安心するし、先生を信頼します。保育士が子どもの様子を伝えることで、家庭と園でパートナーシップが生まれるのです。園の先生もすてきでしたが、丸山さんも保育士にだんだん近づいていて、すごいと思いました。
丸山桂里奈さん(MC) 今、大豆生田先生に褒められることが生きがいになっています。うれしいです。
りんたろー。さん(MC) 私も保育園に行きたいと思いましたね。
丸山桂里奈さん(MC) ぜひ、行ってみてください。本当に気づかないところに気づけると思います。身をもって体験できるのは違いますよね。預けるだけではなく、成長させてくれる場所だと思いました。
大豆生田啓友さん 保育園のことは、世の中で十分にわかってもらえていなかったように思います。例えば、ドキュメンテーションとして、写真の記録で発信していましたね。遊んでいるだけのように見えても、園での遊びの中には成長や学びがあります。それが、きちんと親に伝わることで、「先生からも大事にされている」「こうやって子どもの育ちがあるんだ」と、親も学んでいくわけです。保育士はプロフェッショナルな仕事なんです。
保育士体験から1か月後
保育士体験から1か月後、保育園のかえで組を訪ねました。
子どもたちに「誰が先生で来てくれたか覚えてる?」と聞いてみると、「カリナ先生」と返ってきました。たくさん遊んだことを覚えてくれていました。
そんなカリナ先生に、みんなでプレゼントをつくることになりました。どんなプレゼントができたのでしょう。
保育園主任の堀川さんが、スタジオに持って来てくれました。
丸山桂里奈さん(MC) サプライズじゃないですか! すてきです。ありがとうございます。かわいい。![]()
りんたろー。さん(MC) うれしいですよね。堀川さん、カリナ先生の保育士っぷりはいかがでしたか?
堀川さん(保育園主任) 子ども一人ひとりと丁寧に笑顔で関わってくれたので、私たちもとても元気をもらいました。
丸山桂里奈さん(MC) あの1日が私も忘れられなくて、「みんな元気かな」って思っていたので、本当にうれしいです。![]()
堀川さん(保育園主任) 子どもたちに「カリナ先生にプレゼント渡しに行くんだ」と話したら、「また遊びに来てほしい!」と言っていましたよ。
丸山桂里奈さん(MC) よかった。うれしいです!
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