アタッチメントの実践編、家庭でできる最新プログラム「Watch Me Play!」とは?
チェリー吉武さんと白鳥久美子さんには、最近こんな悩みがあります。
(チェリー吉武さん・白鳥久美子さん)
そこで2人に、イギリス発の親子プログラム「Watch Me Play!(ウォッチ・ミー・プレイ)」を試してもらいました。
「Watch Me Play!」とは?
「Watch Me Play!」は、アタッチメント理論をベースに開発されたプログラムです。もともと里親家庭向けのものでしたが、現在では一般家庭にも普及しています。基本は、子どもの遊びを見守るだけです。
「Watch Me Play!」日本版を監修した御園生さんに、くわしく教えてもらいました。
準備のポイント
まずは準備です。子どもが自由に遊べる環境づくりがポイントになります。
子どもに「ダメ」と言わなくてもいいように、触られたくないものはあらかじめ片づけます。
テレビ・スマートフォンの電源はオフにして、子どもも親も遊びに集中できるようにします。
おもちゃは電池式や電子機器ではなく、子どもが想像力を働かせるシンプルなものだけにします。
大切なことは
「Watch Me Play!」のときは、子どもに「質問やアドバイスはしない」、「子ども主導の遊びに親はついていく」ことが大切です。子どもの自由な遊びが最優先なのです。
その他の主なルールはこちらです。
〇基本は子どもと1対1でおこなう
〇1回 5~20分間
〇週に2~3回を定期的に続ける
〇対象年齢は0~8歳
はじめての「Watch Me Play!」
準備が整ったところで、はじめての「Watch Me Play!」がスタートしました。
初日は、パパとママ、御園生さんと一緒にやってみます。
でも、ママとパパは、「子どもをただ見守るだけ」と言われてもどうしていいかわからず、ただ黙っています。
そんな中、お気に入りのおもちゃで遊び出したお姉ちゃん。「こうやって、おくちに入れるやつ」と言うと、御園生さんは「おくちに入れるやつか」とこたえます。
この日は、親子で一緒に遊ぶことなく終わってしまいました。
感想を聞くと、パパは「『どうするの?』『これ料理するの?』とすすめたくなって、我慢するのが大変だった」といいます。お姉ちゃんは「またやる!」と、楽しかったみたい。
ここから1か月間、親子で「Watch Me Play!」に挑戦してもらいました。
白鳥ママの初日は20分。タイマーをセットして「Watch Me Play!」をスタートしました。なぜかあくびが止まりません。
チェリーパパの初日も20分です。こちらも眠たそう。
一方、お姉ちゃんはとてもうれしそう。「Watch Me Play!」を「見てて!の遊び」と呼んで、次にやるのを楽しみに待つようになりました。
見ているだけで大丈夫?
プログラムを始めて2週間後、白鳥ママにある悩みが。
白鳥ママ 子どもは楽しそうだけど、自分はやることがなくて、手応えがなくて、このままでいいのか不安になる。
チェリーパパ きっと、何かをやることによって発見があるわけじゃん。
白鳥ママ 私は与えることが親の仕事だと思っていて、何かしたほうがいいんじゃないかと思う。例えば、想像力がわきたつようなこととか。ずっと見ているだけで楽をしていいのか、と思ってしまう。
御園生直美さん 子どもにとって、自分のいちばん重要な人がそばにいて自分を見てくれることは、大きなごほうびで、栄養になります。英語では「Being(ビーイング)共にある」という言葉があります。子どもにとって、いちばん大事な人がずっといてくれて、安全を感じて、安心した状態で遊ぶことで、エネルギーがたくさん出てきます。「ママはどこ?」と探すこともなく、没頭できます。親が近くにいる、見ていることはものすごく意味があるんです。 もっと自信を持ってください。子どもがとても喜んでいるのは、太陽の光をいっぱいもらっているようなことです。「Watch Me Play!」をうまくできているのだと思います。コツをつかめないときは、子どもの様子を見ながら、行動を実況してみてください。例えば、移動しているときに「トコトコトコ」と実況してみるんです。子どもの行動を実況することで、子どもは「私を見ていてくれる」と実感できます。
白鳥ママ 話を聞いてもらって、「私は太陽なんだ」と思いながらいられるようになりました。まだ「こうやってあげなきゃ」が出ちゃうけど、だいぶ気持ちが楽になりました。
開始から1か月後
3週間がたったころには、ママとパパもお姉ちゃんへの向き合い方が変わってきました。以前は眠たそうにしていた2人ですが、今では遊びの世界を一緒に楽しんでいるようです。
そして開始から1か月後、お姉ちゃんに大きな変化があったそうです。
白鳥久美子さん お姉ちゃんが「ギャー」と言ったあとに、「イヤな気持ちになったから、さみしくなったから」と、自分の気持ちを言うようになりました。私も、子どもがイヤイヤのときに、「1回見てみよう」と待てる余裕ができました。 お姉ちゃんが下の子に手を出したとき、以前なら「危ない」と言っていましたが、それも待つようにしました。すると、「自分が悪い」と思ったのか下の子の頭をなでたりして、「待っていればよかったんだな」「私が行き過ぎていたんだな」と思いました。
「Watch Me Play!」を続けて1か月、自分の気持ちを素直に出せるようになったお姉ちゃん。親は太陽のように子どもを見守っていることがいちばん大切だと、気づかされた1か月でした。
りんたろー。さん(MC) いろんな発見がありましたね。チェリーさんはスムーズに入れましたか?
チェリー吉武さん 子どもと同じ目線というか、フラットな気持ちで入ると、自分も楽しくなりましたね。子どもがすごく喜ぶ姿を見たら泣けちゃいました。
丸山桂里奈さん(MC) 私はすぐダメと言ったり、先回りして教えたりしてしまうので、やってみたいと思いました。
りんたろー。さん(MC) アタッチメントの「見守って踏み込まない」を、どうしたらいいかわからなかったのですが、映像で見るとわかりやすかったです。こういうことでいいんですね。
「Watch Me Play!」は子どもの自尊心や自信につながっていく
御園生直美さん 「Watch Me Play!」では、はじめから「ダメ」「危ない」と言わなければいけないことはやりません。子どもにとって、この時間は何をしても、ずっと見ていて応援してくれて、「それをやったんだね!」「楽しいんだね!」と言ってもらえる。「この時間は僕が主役なんだ」「自分が考えていることは大事なんだ」と思えて、子どもの自尊心や自信につながっていくと考えられます。![]()
―― 子どもを見守ると、なぜ親にも変化があるのでしょうか?
子どもの成長に立ち会うことが親の喜び・幸せになっていく
回答:遠藤利彦さん 親が、子どもの成長を感じとっているのだと思います。子どもの成長に立ち会うことが、親の喜び、幸せになっていく。そこで親が変わるのでしょう。子どもが、主体的・自発的に何かをしようとしていることに、温かいエールを送る応援団になれたのが重要なポイントだったと思います。
すくすくファミリー(お子さん2歳4か月) 最初は「本当に見ているだけでいいの?」と半信半疑でしたが、だんだん見ているだけでも子どもは「こういうことを思って、こういう動きをしてるんだ」とわかってきて、子どもの遊びの世界に一緒に没頭できる感じが伝わってきました。私もやってみたいです。
すくすくファミリー(お子さん1歳1か月) とても勉強になりました。5分からならできるかなと思います。例えば「今、これできたね!」「今、それ楽しいんだね」といった声かけはしてもいいですか?
子どもがしていること・考えていそうなことを言葉にする
回答:御園生直美さん もちろんです。「Watch Me Play!」の見守る中に「こちらから提案する」はありませんが、「子どもがしていることを言葉にしましょう」というルールもあります。例えば、「今、これを見たんだね」「開けたんだね」「閉めたんだね」と声をかけてみます。あるいは「今、考えているんだね」「何しようか迷っているんだね」のように、子どもが考えていそうなことを言葉にするのも重要です。
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