誰にも悩みを話せないとき…
続いて、誰にも相談できなかったけれども、小さな一歩を踏み出してみたという方の体験談を紹介します。
パパの転勤が多く、妊娠7か月のときに引っ越してきました。パパは忙しくて夜勤も多く、一日中子どもとふたりだけで過ごすこともあります。コロナ禍で、なかなか人と会うこともできませんでした。 産後3か月ではじまった自治体の産後ケアを利用してみましたが、しっかりした受け答えはなく、あまり悩みを受け止めてもらえないように感じました。同世代のママ友が欲しくて子育てひろばにも足を運びましたが、深い関係になれませんでした。例えば幼稚園の話題になっても、「あ、地元に帰っちゃうんですよね」と言われて話が続きません。 実家に里帰りするたびに、今の住まいになじめない孤独感や、子育て支援の格差を感じてモヤモヤが増すばかりでした。将来、別の場所に引っ越すと思うと不安でしたが、パパに相談したくてもなかなか言い出せず、子どもとパパの前で泣いてしまうこともありました。 そんな私の心の支えになっているのが育児雑誌です。ふと、雑誌の読者アンケートに投稿してみたところ、その内容が掲載されたのです。「母というものが、こんなにも孤独なものだとは知らなかった」という内容でした。出産してからずっとひとりでやってきたことを、拾ってくれる人がいて、救われた気持ちになりました。イラストレーターや作家など、全く違う観点の方も同じ紙面に載っていて、自分の世界が広がった気がしてうれしかったです。 (お子さん1歳4か月のママ)
「自分はこれでいい」と感じることが力になる
コメント:大日向雅美さん 孤独は、私たちの生きる力を奪うと思います。周りの人が親しくしている中で自分の居場所がないと感じて、どんなにつらかったことかと思います。でも、雑誌への投稿を通して、「自分はここにいていいんだ」「この社会に存在していいんだ」と思えた。「自分はこれでいい」と感じたい自己承認欲求が満たされて、力となっていったわけです。性別や環境を超えた、いろんな方に認めてもらえて、自分の居場所が広がったのではないかと思います。
パートナーとじっくり話すことが大事
コメント:市川香織さん 生まれ育った場所から離れて育児をする「アウェイ育児」の悩みの典型だと思います。頑張っているパパに「自分も苦しい」と言えず、つらさがつのって、子どもの前でも泣いてしまったのでしょう。それは、心がぎりぎりのところまで来ているサインなのです。そんなときは、パートナーとじっくり話すことが大事です。
―― その後ママは、パパに「ちょっと話をしたい」とドライブに誘って、子どもが寝ているときに、「目標や計画がないと、とてもやっていけない」と伝えたそうです。パパは気持ちを汲み取ってくれて、少しずつ夫婦ともに心を開けるようになったといいます。
環境を変えると、話を聞いてもらいやすい
コメント:大日向雅美さん まず、パパに話せたことがすばらしいと思います。パパが変わるかどうかではなく、自分が言えたことに自信を持ってください。 また、ドライブに誘ったことは上手なセッティングですね。リビングなど、日々の延長の中で話すと、「また愚痴か」と思われて気持ちが届かないかもしれない。場所を変え、環境を変えることで、パパも素直に聞けたのではないかと思います。
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