今回のすくすく子育ては1時間スペシャル「すくすくナイト」。
育児を楽しめない自分は親失格だと感じたり、心が追い詰められて子どもに「ごめんね」と泣いてあやまったり、パートナーがつらいときに何をしてあげればよいのかわからなかったり。子育て中の心の危機について、専門家と一緒にじっくり考えます。
専門家・ゲスト;
大日向雅美(恵泉女学園大学 学長)
青野慶久(サイボウズ株式会社 代表取締役社長)
ベッキー(タレント/2児のママ)
子育て中にメンタルクライシスに陥ったとき、おもな相談先や支援機関
今回のテーマについて
今回、番組「すくすく子育て」では子育て中にメンタルクライシスを経験したという方(138人)にアンケートを行いました。「あなたの心を追い詰めるものはなんですか?」という質問の回答を集計した結果がこちらです。
1位は「孤立感」でした。「親や周囲に頼ることができない」「社会から取り残されたような気持ちになる」といった声が寄せられました。コロナ禍の影響で孤立感を深めた方も多かったようです。2位「体の疲れ」、3位「パートナー」、4位「家事」、5位「仕事との両立」が続きました。
―― この結果についてどう感じますか?
青野慶久さん
まず、「パートナー」が入ったことにうなずきました。例えば、必死に子どもの世話をしているときに、のんびりスマホを触られたら、いらだってしまう。視界に入ってほしくない、いないほうがいいくらいだと思うこともありえるでしょうね。
大日向雅美さん
人が人として、安心して生きられる条件が、すべて奪われてしまっていると思いました。「体の疲れ」は生理的な安全が損なわれます。そして「パートナー」。2人いるのに心がつながらないほうが孤独を感じます。それから「孤立感」も社会との接点が持てない。人間の承認欲求や社会的欲求が奪われて、このような状況で子育てをするのは、本当に大変だと思います。
多くの方に回答いただいたおかげで、このような状況が見えてきましたが、声をあげることができない方もたくさんいます。そんな方々を含めて、みなさんの参考になることができように、パパ・ママたちがどのように追い詰められたのか、心を追い詰めずに子育てをするにはどうしたらいいのか、メンタルクライシスに陥ったら何ができるのか、子育て中の心の危機について考えていきます。
子育て中の親を追い詰めるものは何か?
心を追い詰めずに子育てするには?
パートナーがメンタルクライシスに陥ったら?
子育ては経済的にも未来につながるもの。子育てを応援する風土に変えたい
青野慶久さん
社会の風土を変えていきたいですね。どうしても、子育てに給料がないことで、うしろめたさのようなものを感じてしまっている方もいます。でも、経済の視点で見れば、子育ては未来の労働者や消費者を育てることでもあります。子育てしない社会は、経済が縮小し、商売どころではないわけです。子育てしているパパ・ママを、みんなで応援するような風土に変われば、子育てしやすい社会になるのではないかと思います。
みんなが味方でなくてもいい。応援してくれる方と手を組んでいけば時代は切り開かれる
大日向雅美さん
子育てをしているママもパパも、自分の声にもっと率直に、真摯に耳を傾けて、自信を持ってください。つらくて、ストレスをためているのは、それだけ頑張っているからです。ベッキーさんが悩んだことも間違いではない。自分を信じましょう。
もうひとつ、社会を信じてほしいと思います。ママたち、パパたちを応援しようという方も、着実に増えています。職場も変えないといけないという、青野さんのような方も出てきてくださっています。
100%、みんなが味方でなくてもいい。半分でも3割でも、そんな方たちと手を組んでいけば、間違いなく時代は明るく切り開かれていくと思います。
みなさんは、子育てでつらいとき、どうやって心を整えていますか? ママ・パパたちに自分なりの方法を教えてもらいました。
ダンス
10分、15分でも体を動かして汗がかけるのでスッキリします。親子でも楽しめます。
(お子さん2歳2か月のママ)
筋トレ
頭がクリーンアップされて、気持ちを切り替えて仕事や子育てに向かっていけます。
(お子さん2歳2か月のパパ)
つぶやきメモ
子育てにプレッシャーを感じていたとき、父から「そう感じるのは当然。いっぱいいっぱいになったら、まずノートに書いてごらん」と言われて始めました。頭だけで考えるとグルグルしてしまうけど、書くことで整理されるような感じがします。
(お子さん2歳2か月のママ)
サンドバッグ打ち
心が疲れたときの解消法は、ずばりサンドバッグです!
(お子さん3歳・1歳のパパ)
ヘアアレンジ
外出しない日でもヘアアレンジします。ちょっとおしゃれしていることで気分がアップして、「今日も頑張ろう」と思えます。気分転換のいいスイッチになっています。
(お子さん1歳6か月のママ)
好き やってみたい 日記
自分の好きなことや、やってみたいこと。自分だけの世界を日記に書いたり、読み返したりすることで、心のデトックスをしています。自分の「好き」を考える時間が大切だと思います。
(お子さん1歳3か月のママ)
刺しゅう
何も考えずに目の前にある図案と向き合って、間違えないように取り組んでいると、イライラも一旦鎮まる感じがします。心を整えるだけでなく、子どものかわいい小物にもなります。
(お子さん5歳・3歳のママ)
早朝ランニング
これまで夜にやってみようと何度も試しましたが、寝かしつけもあって、早朝に落ち着きました。自分のために、自分だけの時間で、体にいい疲労感を与えることが、とても気持ちいいんです。子育てのために体力もつけられます。
(お子さん3歳・1歳のママ)
おもな相談先や支援機関
子育て中にメンタルクライシスに陥ったとき、おもな相談先や支援機関は?
〇子ども家庭支援センター
〇子育て世代包括支援センター
〇産科・小児科など かかりつけのクリニック
〇助産院
〇各都道府県の助産師会の無料電話相談 など
イライラがつのって、子どもにあたってしまいそうなときの相談先は?
〇電話相談ダイヤル「189」
全国共通の電話相談ダイヤル「189(いちはやく)」をご存じですか? お住まいの地域の児童相談所につながり、子育ての不安や悩みの相談も受け付けています。子育てでイライラしてどうしようもないとき、ひとりで悩まずに電話相談などを利用してみましょう。
〇こども家庭庁ホームページ「赤ちゃんが泣きやまない」
そのほか、厚生労働省のホームページでは心の悩みを相談できる窓口を紹介しています。
電話はもちろん、SNSなど気軽にできる相談方法もあります。
* 厚生労働省ホームページ「まもろうよ こころ」
収録を終えて、専門家の大日向雅美さんに伺いました。
子育てでイライラしてしまい、つい子どもにあたってしまいます。どうしたらいいでしょうか?
大日向雅美さん
子育ては頑張れば頑張るほど、イライラしたり、気持ちが揺れたりして当たり前です。どうか自信を持ってほしいと思います。たとえ手をあげてしまったとしても、坂を転がり落ちるようにエスカレートするのを止めるためには、この子を愛しているんだと思えることが大事です。そして、そういうママやパパを社会がみんなで支えなくてはいけないということを、あらためて考えています。