子育て中のパパ・ママにしのびよる心の危機 —— メンタルクライシス。みなさんは心の不調を感じることはありませんか? 正解のわからないはじめての子育てではなおさらです。心の危機を感じたらどうやって乗り越えていけばいいのか、2回にわたって考えます。
専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学 学長/発達心理学)
市川香織(東京情報大学 准教授/助産師/母性看護学)
今回のテーマについて
2020年11月に行われた調査(※)によると、0~5歳の子どもを持つ保護者の30.3%に、中等症以上のうつ症状があるとわかりました。今は、コロナ禍の影響も心配されます。
※2020年 国立成育医療研究センター調べ
子育てをパパ・ママだけで担うのは難しい
大日向雅美さん
コロナ禍の影響で、直接人と関わったり、みんなで集まるようなことが難しくなっています。子育ての必須アイテムが根こそぎ奪い去られている。その上、はじめての子育てであれば、心が折れたり、苦しくなったりするのは当然です。コロナ禍以前に、そもそも子育てをパパ・ママだけで担うのは無理があるのです。そのことが改めてあぶり出されたと感じています。
今ここにいることが奇跡的ですばらしいこと
市川香織さん
コロナ禍でつらい日々を過ごしている方がたくさんいると思います。この時期に妊娠・出産をむかえた親たちは、孤独の中で本当に頑張って乗り越えたところではないでしょうか。そんなみなさんに、今ここにいることが奇跡的ですばらしいことだと言いたいのです。
今回、番組「すくすく子育て」にはたくさんの体験談が寄せられました。みなさんの対処法を紹介します。
Twitterで同じくらい大変な思いをしているママもたくさんいて、ひとりじゃないと思えた。YouTubeで息抜きもした。年配世代には信じがたい子育ての息抜きかもしれませんね。
(お子さん2か月のママ)
保健師さんに泣きながら電話をしました。話を聞いてくれただけで気持ちがラクに。家事の外注ができればいちばんいいのですが、とりあえず宅配のミールキットで乗り切っています。
(お子さん3歳・1歳4か月のママ)
赤ちゃんをあやしながらスマホでラジオを聞いていました。泣き声以外の声が聞こえてくるだけで冷静さを保てるのだと思いました。
(お子さん3歳・10か月のママ)
子どもをかわいいと思えないというのは人間としてダメだと思って、チャット相談をやってみた。虐待防止のサービスだったが、非対面で、匿名で相談できたのは良かったし、状況を整理してもらえて産後初めて泣くことができた。
(お子さん4歳・0歳のママ)
里帰り中は母からの言葉で自信をなくてしていましたが、保健師さんに連絡し「よくやってるわよ、あなたは間違っていないのよ」と言ってもらえて、涙が出るほどうれしかったし、ひとりで悩まなくていいんだと心強かったです。
(お子さん11か月のママ)
地域の産後ケア事業を申請し、産院で数日間宿泊して、みんなから声かけと育児を助けてもらった。
(お子さん7か月のママ)
完全母乳ではなくミルクにして、夜間対応は夫もしてくれることで「私がひとりで子どもを守らなければ」という責任感から少し解放されて楽になりました。
(お子さん4歳・3歳・1歳7か月のママ)
育児や家事、一日の「これをしなきゃ」をやめました。ちゃんと離乳食作らなきゃ、掃除しなきゃなどなど。できなくていい、適当でいい。頭ではそう言い聞かせていたのに手の抜き方がわかっていなくて自分を苦しめていたと気づきました。少しずつですがよくなりました。
(お子さん1歳9か月のママ)
心療内科を受診し、カウンセラーの方に話を聞いてもらいました。全く否定されずに話を聞いてもらえることがこんなに救われるんだと知りました。「みんな頑張っている」と思って自分のつらさをしまおうとしていました。今、少しでもつらいと思う人がいたら、ぜひそういう所を頼ってほしいと強く思います。
(お子さん3歳のママ)