スタートカリキュラムとは?
2020年度から、小学校の学習指導要領が変わりました。幼稚園・保育園・こども園と小学校の教育をスムーズにつなげるための「スタートカリキュラム」が全国の小学校ではじまっています。
これまで、「遊びを通した学び」が中心だった幼児教育から、小学生になったとたんに国語・算数など教科の学習に切り替わることは、6歳の子どもにとって大きな負担でした。「スタートカリキュラム」は、そのギャップを埋めるためのものです。
横浜市では、2009年から「スタートカリキュラム」をはじめています。
小学校に少しずつ慣れて、教科の学習に取り組めるように、3つの学びの時間が設けてあります。これは、入学直後の4月・5月の時間割の例です。最初は「なかよしタイム」が多く、だんだん「ぐんぐんタイム」が増えていきます。
※カリキュラムは、自治体や学校、子どもの状態によって異なります
どんな学びの時間なのか、ある小学校の様子をみてみましょう。
「なかよしタイム」は、幼稚園や保育園と同じように遊びが中心です。新しい友達と仲よくなって、安心して自分が思ったこと、気づいたことを言えるようになります。
「わくわくタイム」は、新しい友達と一緒に考えて、具体的な体験をすることで、学ぶ意欲を育て、教科の学習につなげていく時間です。
子どもたちの入学前までの体験を生かせるよう、先生は「園ではどうだった?」「どうしたらいいと思う?」という声かけをしているそうです。
この学校では入学3日目からの「わくわくタイム」で「学校探検」を行いました。子どもたちが校内の行きたい場所に行き、気になることがあったら自分たちで調べます。
プールに興味を持った子どもたちは、校長先生に「プールを作った人いますか? 」と聞いてきました。
先生は質問にそのまま答えずに、子どもたちの興味のもとを引き出し、対話をすすめます。
「どうしてプールを作った人が知りたいの?」
「プールの深さを知りたいんです」
「プールを作った人に聞かないとわからないかな? みんなでも確かめられると思いますよ。深さを知る方法はないかな?」
少し考えこんだあと、
「わかった!」と、ひとりの子がひらめき、大きな定規で測ることを提案しました。
先生は「ナイスなアイデアだね。わかったら教えてね」と伝えます。子どもたちは大きな定規を持って、プールへ向かいました。
先生に「プールに落ちない方法を考えてね」と言われ、ひとりの子のアイデアで、腹ばいになってプールに近づき深さを測ることができました。
自分たちの疑問について自分たちなりに調べて、答えを見つけたのです。
子どもたちは「わくわくタイム」で自分たちが興味を持ったことを確かめる楽しさを実感し、その後の「ぐんぐんタイム」では、子どもたちの興味や関心に合わせながら、教科の学習をはじめていきます。
幼児教育で培ってきたことを大切にして伸ばしていく「スタートカリキュラム」が、全国の小学校で進められています。
スタートカリキュラムの進め方は、自治体や学校によって異なり、子どもの様子に合わせてアレンジすることができます。 例えば、この小学校では、現在、横浜市の3つの時間に加えて、毎朝「あそびタイム」という子どもたちが友達と誘い合って自由に遊ぶ時間を設けているそうです。
先生は、「あそびタイム」での子どもたち発信の遊びから「わくわくタイム」「ぐんぐんタイム」、さらに教科の授業につなげていく題材を見つけることができるそうです。
コメント:吉永安里さん 「わくわくタイム」では、子どもたちが行きたい場所に行って、「こんなもの見つけた!」というわくわくした気持ちを大事にしています。例えば、プールの深さを測るような、ひとつの出来事をきっかけにして、さまざまな教科の学習につながるようにカリキュラムの作り方が工夫されています。 2020年度は、新型コロナの影響で休校になるなど、スタートカリキュラムが思うようにできない状況でしたが、こういった取り組みが全国的に行われるようになったということになります。
親世代とは違う「新しい学び方」がはじまっている
回答:大豆生田啓友さん すでに、小学校入学前、年長の子どもたちが、自分たちの遊びの中で「これはなんだろう」「ちょっとみんなで考えよう」といったことをはじめています。それを受けて、小学校のスタートカリキュラムがあるわけです。 さきほどのプールの深さを測るような学び方は、幼児期・小学校だけでなく、中学校・高校・大学での学び方においても大事になっていきます。自分たちが主体的に、興味を持ち、友達と対話し、一緒に考え、協力して、試行錯誤する。答えがないことに対しても、自分たちが自らで考えて探求していくあり方です。このことが、親世代とは違った重要な学び方になっていきます。
「入学前に教え込む」という考えからの脱却を
回答:大豆生田啓友さん とても関係があると思います。さきほどのスタートカリキュラムの様子は、親世代が経験してきた学校での学習と全く違うのではないでしょうか。親が「ずっと静かに座って勉強する」というイメージを持ったままだと、早くからいろんなことを教え込まないと小学校で困るのではないかと考えてしまいます。 でも、学び方は新しくなっています。「入学前に教え込む」という考えから脱却することが大事です。そうすれば、親も子も焦ることはありません。心配しなくても、小学校ではこんなに楽しく学びがスタートできる。そのように、保護者の安心にもつなげてほしいと思っています。
「どうしたらいいと思う?」「自分で考えてみよう」などの声かけを
回答:吉永安里さん 家庭でも、学校と同じように「どうしたらいいと思う?」「自分で考えてみよう」といった声かけをしたり、子どもと一緒に考えてみましょう。子どもが、何かができるようになることではなく、考えることがおもしろい、考えることに価値があると伝えていけるといいですね。
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