予防接種の副反応が心配!
(6か月 女の子のママ)
(11か月 男の子のママ)
副反応とは、本来の目的以外の反応の総称
回答:松永展明さん 副反応とは、予防接種によって起きる本来の目的以外の反応です。もともと、湿疹が出やすかったり熱が出やすかったりする時期に予防接種を受けるので、そのすべてを副作用といってよいのか難しいため、総称して副反応と呼んでいます。
予防接種による副反応
解説:松永展明さん
予防接種による副反応には、よく見られる軽度のものと、まれにしか起こらない重度のものがあります。
軽度では、注射のあとが赤くなったり腫れたりする部分的な反応。インフルエンザワクチンでは、9.1%の確率で見られます。熱が出たり、だるくなったり、頭が痛くなったりする全身の反応も、よく見られる副反応です。MRワクチンでは、18%の確率で起きると言われています。軽度の副反応は、たいていは数日で回復します。
一方、代表的な重度の副反応は、じんましんやしびれ、息苦しさなどが起きるアナフィラキシーです。インフルエンザワクチンで起きる確率は、0.00004%です。筋力が低下したり、足がしびれたりする、ギラン・バレー症候群がインフルエンザワクチンで起きる確率は 0.0001%。けいれんや意識障害などを引き起こすこともある髄膜炎の起きる確率は、おたふくかぜワクチンで 0.01〜0.1% とされています。こうした重度の副反応が起きることは非常にまれで、多くの場合、すぐに適切な治療を受ければ回復が見込めます。
接種直後に起きる副反応もある。生ワクチンは5日〜1週間後に副反応が出ることも
回答:松永展明さん すぐに反応が出るものは、接種のあとの腫れや皮膚の赤みなどの局所反応です。夜から翌日にかけて出ることが多いです。体質によって熱が出やすかったり、1度副反応が出た方は腫れやすいなどがあります。また、病院などで接種後30分ほど待つことがあると思います。これは、アナフィラキシーなど、直後に起こる副反応に対応して防ぐためです。 一方で、病原体を弱毒化した生ワクチンは、症状が出るまで5日〜1週間ほどかかる場合もあります。その間は、副反応が出る期間として様子を見る必要があります。
自然感染と予防接種の副反応は、リスクを比較して考える
回答:松永展明さん 自然感染と予防接種のどちらが安全なのかは、それぞれのリスクはどれぐらいかという観点で考えてください。 ※国立病院機構 三重病院 庵原俊昭まとめ(2005) 例えば、おたふくかぜの場合。自然感染だと耳の下が腫れる耳下腺炎が 60〜70% の確率で起きるのに対し、ワクチンでは3%です。不妊の原因となる精巣炎は、自然感染だと 20〜40% の確率で起きますが、ワクチンで精巣炎になることはほとんどありません。また、おたふくかぜの後遺症として心配される難聴になる確率は、自然感染では 0.01〜0.5% 、ワクチンではほとんどないとされています。 このようにリスクを比較すると、ワクチンを接種して予防してあげたほうがより安全ではないかと考えています。
1度に済ませたほうが悪い意識がつきにくいことも
回答:松永展明さん 小児科医としては、赤ちゃんに注射を打ちたいわけではありません。でも、それよりも大事なことがあります。考え方にもよりますが、例えば、注射を4回に分けて毎回泣きながら接種するより、1度に泣いている内に済ませたほうが、赤ちゃんにとって病院への悪い意識がつきにくいのではないかと思います。
同時に接種しても副反応のリスクは同じ
回答:松永展明さん 副反応のリスクは、同時に接種しても、別々に接種しても同じです。同時に接種すると、その回での副反応が出る確率は接種した分の確率が足されて上がります。1度に4回接種すれば、4回分が足し算になると考えてください。間隔をあけて別々に接種しても、接種の回数は同じなので、最終的に副反応のリスクはまったく変わらないと思います。
メリットは適切な時期に早く免疫をつけられること
回答:松永展明さん 同時接種のいちばんのメリットは、適切な時期に、早く免疫をつけることができることです。また、コロナ禍でなかなか小児科に行きにくい状況では、1度に複数のワクチン接種を済ますことで外出の回数を少なくすることもできます。
海外から病原体が持ち込まれることもある
回答:松永展明さん 喉元過ぎれば熱さを忘れると言いますが、それらの感染症は、かつて流行して多くの方が亡くなった病気ばかりです。現在は国際化が進み、いろいろな国から病原体が入ってくることも考えなくてはいけません。予防接種率が下がると、必ず感染症が増えてきます。 例えば、麻疹(ましん)・はしかは、10年ほど前から日本国内での流行は抑えられています。 ※「麻疹ウイルス分離・検出状況」国立感染研究所ホームページより.2019年は8月14日現在の報告数 しかし、2014年と2019年には、海外の麻疹ウイルスが日本に持ち込まれて流行しました。感染者の多くは、ワクチンの接種率が低い20〜30代の大人だといわれています。このように、決して油断をしてはいけないと考えています。
複数回ワクチンを接種することで対応できる
回答:松永展明さん たしかに、病気になって獲得する免疫(自然免疫)のほうが、一気に高くなることがあるかもしれません。ただし、ワクチンも、1回だけではなく、2回接種することによって、しっかりと防御することができるようになります。
病気にかかった後に出る症状もある
回答:松永展明さん 病気にかかると、その後で出る症状もあります。例えば、帯状ほう疹は水ぼうそうにかかったあとになる可能性があります。麻疹(ましん)にかかると、ごくまれに10年後に脳炎になることもあります。そういった病気を防ぐためにも、予防接種が必要だと思います。
ワクチンによってなくなった病気も考えてほしい
回答:松永展明さん ワクチンによる感染症の予防は、その副反応などが注目されてしまうことがあります。でも、これまでにワクチンが果たした役割についても考えていただきたいと思っています。 例えば、天然痘という非常に重篤な病気は、ワクチンによって世界から根絶することができました。 また、髄膜炎ワクチンといわれる、Hibワクチン・肺炎球菌ワクチンによって、髄膜炎になる子どもがほとんどいなくなっています。この感染症は、前日までは少し熱が出ている程度の子どもが、次の日には意識がなくなり、約5〜10%の方が亡くなり、30%に後遺症が残ってしまうような、本当に怖い病気です。この病気を防げるだけで、小児科医は安心して感染症を見ることができるようになりました。
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