【専門家に聞いてみよう】スマホ・タブレットと子ども どうつきあう?(2)

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2019/08/26

スマホ・タブレットと子ども どうつきあう?~

いまや、生活になくてはならないインターネット。ですが、「どのくらい子どもにスマホを見せていいの?」「子どもには安心なコンテンツを見せたいけれど・・・」など、疑問や不安を感じるパパ・ママも多いのではないでしょうか?

「すくコム」では、乳幼児の子育てに詳しい教育学者の汐見稔幸さんに、デジタル機器・コンテンツとのつきあい方についてうかがいました。

第1回 / 第2回
Q
今は、子ども向けのコンテンツが数多くありますが、どんな動画が子どもにとっていいのでしょうか? “子どもが喜ぶ”“子どものためになる”動画とはどんなものでしょうか?

親子の関わりを“生産的”にするコンテンツ「あそび」

親子の関わりがどうしても「やめなさい」「静かにしなさい」というように規制的なものになりがちないま、親子の関わりを「生産的」なものにするコンテンツがあるといいなと思います。

いま子育て中の家庭にあったらいいな、と思うコンテンツの種類としては、まずは「あそび」です。子どもとどう遊んだらいいか、子どもにどういう遊びを提案したらいいか。子どもをどういうところに連れて行ったらいいか。なかなか今のお父さん・お母さんにはイメージできないことも多いんですが、それが具体的にわかるようなコンテンツがあるといいですよね。

子どもは「つくる」ことも大好き

もうひとつは「つくる」です。お父さん・お母さんたちに、「つくる」ことが子どもにとって重要だといっても、イメージが湧きにくいでしょうけれど・・・。
例えば、子どもは料理なんかをつくることがすごく好きなんですよ。そこに料理の手ほどきとして、動画などで「まず、皮をむいてみよう」「包丁をもってみよう」「使い方は・・・」「ここは大人といっしょにやろうね」なんてガイドがあれば、子どもが自力でやることにつなげていけます。

僕の個人的なアイデアだけど、「カレー名人になろう!」なんてコンテンツはどうでしょう? 最終的には子どもが自分で全部つくれるようにするんですけど、その中に「いろんなものを入れてみるとおいしいよ」「インスタントコーヒーを入れるとどうかな?」「ヨーグルトを入れるとどうかな?」なんていうのも入れてね。子どもがいろいろチャレンジできるようにしておく。そうやって家で料理をつくるのが楽しくてしょうがない、という状況にもっていく。料理って、はまるとあんなに面白い創作の世界はない、っていうくらい面白いんです。自分で工夫したらこんな味ができるんだ!って達成感もありますしね。こういう「つくる」喜びの経験から、親子で生産的なことに目覚めていくということが、必要だと思いますね。

「理科系」へ誘うコンテンツ

3つめは「理科系の知識」です。“ちょっと工夫するとこんなに面白い世界がある”というのは料理と似ていますが、これを家庭で子どもに伝えるのはなかなか難しい。だいたい、大人になって科学者になるような人たちっていうのは、小さい時から自分でものをつくることや、自分でいろいろやってみることが好きだった人が多いんです。子どもがそういう世界へ目を向ける、小さなきっかけになるような理科系のコンテンツがあるといいですね。

例えば、紙飛行機のつくり方、なんていうのも理科系に入ると思うんですが、本当は子どもは大好きなんですよ。「こんな形にしたら、どのくらい飛ぶのかな」「これを2つくっつけたら、こんなの出来たよ!」なんて、子どもはほうっておいても、自分たちでどんどん工夫していきます。いろいろなアイデアを出してくるようになります。でも、最初に基本の折り方を教えてあげないと始まらない。紙飛行機とか竹とんぼとか、伝統的なあそびの中には、理科的な要素を感じるものがありますから、そういうもののアレンジもいいと思います。

そのほかにも季節を感じる、とか季節の行事などポイントがいくつか挙げられますが、ともかく、親の子どもへの関わり方・接し方の中身が豊かになっていくようなコンテンツがいいですね。

Q
「あそぶ」「つくる」「理科系」などのポイントは、どうして子どもにとって大事なんでしょうか?

子どもたちの将来に向けての育ちという面からも、こういったポイントが重要になってくると思います。自分が挑んでいくことが大好き!と育てていくと、これから答えのない世界で生きる上での基礎力になりますよね。

いろいろなことが、どんどん便利になっていきますよね。これからの時代、もしかしてAIなどの発展で、何も人間がやらなくても済むような時代になったときに、逆説的なんだけど、「手作りの世界を豊かに持っている人間が、最高のぜいたくを味わえる」っていわれたりもするんです。例えば、「食事は簡単に手に入るんだけど、実際に自分たちでつくったほうがおいしいよね。やっぱり自分たちでつくるに限るよね」というようなことです。最低限、生きるための食は確保できるけれども、人間としての喜びは「自分でつくる人」「自分でつくらない人」では違ってくると思います。自分でつくる人の方が、人間としての喜びが濃くなるというか、そんな気がするんですよね。その面白さは人間にとってとても基本的なものなんだと思います。だから、どんな時代がきても自分で目一杯あそべる・つくることができる・探究することができる、その面白さを子ども時代に体験しておくことが重要です。

snm_001_p汐見稔幸(しおみ・としゆき)
東京大学名誉教授・白梅学園大学前学長
専門は教育学、教育人間学、育児学。子育てや教育を総合的な人間学としてとらえ、追究している。NHK「すくすく子育て」等出演中。著書多数。

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