地震、台風、大雨、豪雪など、いつどこで発生してもおかしくない自然災害。災害は、幼い子どもたちの心だけでなく、親の心へも影響を及ぼします。親は、どんな不安を抱え、何をすれば心の回復につながるのでしょうか?
東日本大震災のときに、乳幼児を抱えていたママたちの体験談を聞きながら、親の心のケアについて考えます。
1995年の阪神淡路大震災では、自らも被災しながら、子どもたちや家族の支援をおこなってきた倉石哲也さんにお話をうかがいました。
講師: 倉石哲也(武庫川女子大学 教授/臨床福祉学) 災害は、経験を積んだ大人にとっても予測不可能なことです。人間の脳は、予測不可能でショックなことを、とてもよく覚えているのです。
今回は、災害で起こる親の不安と心のケアについて考えます。
<当時、小学校1年生と1歳7か月の子どもを抱えていたママの体験談>
避難生活中、あまりにもショックで食欲がなくなり、自分の分の食事は、子どもたちが空腹になったときのためにとっておいたんです。そのうち、母乳が出なくなったことにも気づかず、周りの人たちから「あなたが食べないといけないよ」と言われました。
子どもを第一に考える親たちは、自分を犠牲にしがちです。しかし、そんな親こそ気をつけなければならないことがあるといいます。
災害時は、睡眠・食事・軽い運動の3つをセットで意識してください。また、少し横になるだけでも体を休めることが必要です。親は自己犠牲的になりがちですので、積極的に意識したほうがよいでしょう。 (倉石哲也さん)
震災の後、子どもが安心して遊べる場所を作っていたママは、ママたちのケアの難しさを感じたといいます。
<当時、第2子を妊娠中だったママの体験談>
震災の2か月後には、ママと子どもが安心して集まることができる場所を作っていました。その場を使って、集まった人たちで体験を共有して、癒し合うようなことを考えていたのですが、なかなか被災の話が出てきませんでした。中には本当にいろいろなものを失っている人もいて、それぞれに背負っているものが違っていたからだと思います。体験を共有できるようになったのは、震災から何年かたってからのことでした。
同じ被災者でありながら、体験したことに違いがあり、自分より犠牲が大きかった人たちを思うと、つらい体験を口に出せなかったのです。
生活が落ち着きはじめたころに、被災の話ができるようになったのは大事なことです。意識して、そういった話ができる機会を作ったほうがよいと思います。 (倉石哲也さん)
では、どうしてもまだ話せない、話す場所がないようなときは、どんなケアがあるのでしょうか。
例えば、ウォーキングやストレッチなどがよいでしょう。体を動かすことは、話をすることと同じくらい心のケアに効果があることがわかってきています。 (倉石哲也さん)
不安をためこまず、話したり運動したりすることで気持ちを整えることが大事なのだそうです。
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