災害で起こる子どもの不安と心のケア(1)災害直後に起こる子どもの不安と心のケア
地震、台風、大雨、豪雪など、いつどこで発生してもおかしくない自然災害。そのとき、幼い子どもたちの心には、どのような影響がでるのでしょうか。そして親は、不安を抱えた子どもたちに、何をしてあげればいいのでしょうか?
東日本大震災のときに、乳幼児を抱えていたママたちの体験談を聞きながら、子どもの心のケアについて考えます。
1995年の阪神淡路大震災では、自らも被災しながら、子どもたちや家族の支援をおこなってきた倉石哲也さんにお話をうかがいました。
講師: 倉石哲也(武庫川女子大学 教授/臨床福祉学) 小さい子どもほど、不安を察知するものです。不安に対して敏感でないと生きていけないのです。
今回は、災害直後に起こる子どもの不安と心のケアについて考えます。
<当時、小学校1年生と1歳7か月の子どもを抱えていたママの体験談>
津波で自宅を流され、避難生活をしていました。そのとき、当時1歳7か月だった長男の、いつもとは違う様子に気がつきました。ふだんなら私の母に預かってもらっても泣かなかったのに、当時は私の姿が見えないと、ずっと泣いていたんです。私と離れることが不安だったのかもしれません。
<当時、1歳10か月の子どもを抱えていたママの体験談>
子どもが私のそばから離れなくなっていました。ちょっとした物音にビクビクしていたこともあります。きっと、まわりの大人も同じようにビクビクしていたので、敏感に反応していたのだと思います。
このように、子どもが不安な気持ちをあらわすのは自然な行為で、むしろ反応がすぐに出たほうが安心だといいます。
不安の反応がすぐに出たほうが、まわりの大人が気づいてケアできるため、結果的に回復が早いのです。我慢をして、すぐに不安を出さなかった子が、生活が落ち着きはじめた頃に反応を出すことがあります。例えば、急に夜泣きがはじまる、わがままになるなどです。このとき、時間の差があるために、まわりの大人は原因がわからず対処に困ることがあります。 (倉石哲也さん)
傷ついた心のサインには、泣きやすくなる、安心を求めての後追い、かんしゃくを起こすなどがあります。また、腹痛や発熱、過呼吸など体調の変化としてあらわれることもあります。
では、傷ついた心のサインに気づいたとき、親は何をしてあげるとよいのでしょうか。
子どもとのスキンシップを大事にしましょう。被災の直後は、家の片付けや手続きなどで大変だと思いますが、おんぶやだっこでもいいので、子どもとスキンシップをしながら一緒にいることが大切です。そして、できるだけ子どもの生活のリズムを整えてあげること。食事は3回、できれば温かいもの含めて、しっかりと食べさせるのが大事になります。 子どもが遊んでいる様子を見ると、「元気に遊んでいるから大丈夫」と思うかもしれません。でも、遊び終わったあとに抱きしめてあげたほうがよいかもしれません。子どもが求めているタイミングでケアしてあげると、それが短い時間であっても子どもは満足できるので、落ち着きやすいのです。 (倉石哲也さん)
基本的に、ケアをすれば子どもの不安は一時的なものでおさまるそうです。心のサインに気がつき、すぐに対処するためにも、親はふだんから子どもの様子を見守るようにしましょう。
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