子どもに甘えさせることは「甘やかすこと」や「子どもの自立を妨げること」になるのではないか。このように、甘えさせることは、どこかネガティブなイメージを持ちがちですよね。
しかし、実は甘えさせることが子どもの自立につながるといいます。甘えの重要性について、内田伸子先生(十文字学園女子大学特任教授)にお話を伺いました。
子どもは、甘えによる愛着関係を土台にして、自分の世界を広げていきます。甘えが、自立していくときの安全基地となるわけです。 子どもが何かに挑戦すると、失敗することもあります。そこに安全基地があると「どうしたらいいだろう」と立ち戻ることができます。そして、再び挑戦できる。うまくいけば達成感を持ち、自尊心が育ちます。「これができた!」という自分への信頼につながります。自分への信頼は、難題に直面したときに「今度もきっとやれる」と思えることにもつながります。
甘えに応じる、ひとりでやらせる、どちらがいいの?
甘えは子どもの自立にどう影響するのでしょうか。
内田伸子先生は、幼稚園の3歳児クラスを1年間(合計3年間)保育観察しました。クラスは1組(20名)と2組(20名)のふたつ。それぞれのクラスで「甘え」への異なる対応をして、経過を観察したのです。
1組の先生は、子どもの甘えを受け入れ、ボタンをはめてあげたり靴下を履き替えさせてあげるなど、何でも手伝ってあげました。
2組の先生は「幼稚園生だから、自分のことは自分でやりましょう」と言葉で促して、手伝うことはしませんでした。
すると、2つのクラスの子どもたちに顕著な違いが出てきました。
先生が子どもの甘えに応じた1組の子どもたちは、自分で着替えができるようになっていました。先生に対する信頼感が育ち、自分でやってみようという意欲が育ったのです。
一方、先生が言葉で促すだけで手伝わなかった2組の子どもたちは、自分から着替えようという自主的な行動は見られませんでした。
子どもたちが十分に甘えられる安全基地を持つことは、将来自立して生きていくための前提になるのではないでしょうか。子どもに甘えさせて、安全基地になることが、幼少期の親の役目かもしれません。
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