親になって1年 りんたろー。と悩みや気づきを語りあう! 前編
番組のMCをつとめるりんたろー。さんのお子さんが1歳になりました。親になって1年、どんな変化があったのでしょうか。すくすくファミリーと一緒に、2回にわたってリアルなパパライフを語り合います。
専門家: 川田学(北海道大学大学院 准教授/発達心理学) 井桁容子(元保育士)
パパの子育て事情
―― 川田さんが子育てをしていたときと、子育て事情は変わりましたか?
川田学さん そうですね。上の子の子育てをしていたのは20年前でした。当時は大学院生で時間があったので、昼間に子どもを連れて公園に行くことがありましたが、パパは誰もいない。ママたちの中に勇気を出して入っても、なかなかなじめない苦労がありました。
井桁容子さん 今は社会全体に、パパが自然に子育てに入る空気感が生まれてきていると思います。でも、パパは子どもが生まれるまでは「お兄さん」だったのが、経験を通して「お父さん」になっていくので時間がかかりますよね。
子育て1年目に大変だったことは?
まずは、すくすくファミリーのパパたちに、大変だったことを聞きました。
お子さん1歳5か月のパパ 息子が10か月ぐらいのときに、2~3時間全く泣きやまないことがありました。病院に連れて行ったのですが、病院に着いた瞬間に泣きやんで。便秘だったみたいでしたが、「うちの子、大丈夫かな」と、いろいろなことが頭をよぎりました。
お子さん7歳・4歳・6か月のパパ 1人目のときはとにかく必死だったので、記憶があいまいなんですよ。大変だったのは、2人目の娘が食物アレルギーだったことです。病院に通う、食べ物を工夫するなど、経験のないことで。上の子のときよりも精神的に大変でした。
お子さん6歳・4歳のパパ 長男が10か月のときに育児休業から職場復帰したんです。でも「がんばって両立しよう」と自分にプレッシャーを与えてしまって、仕事が忙しくなって回らなくなって。そのときにメンタルをやってしまい、休職したことがありました。休んでいる期間には「自分は何をしているんだろう」とすごく考えました。
子育て1年目には、こんなできごとも…
お子さん1歳5か月のパパ 子どもが3~4か月ぐらいのときに、ママから「早く父親になって」と言われたんです。自分なりに子育てしているつもりだったので「何が足りないんだろう」「寝かしつけとかも可能な範囲でやってるのに…」と自問自答して。一瞬イラッとしましたが、妻には言えませんでした。親としての自覚は、女性のほうが体の変化も相まって先に芽生えて、そこに追いつけていませんでした。
「父親になるのは時間がかかるのかな」と思う反面、こんなぼやきも
お子さん1歳5か月のパパ 私の「こうしてみない?」という意見は、採用率が低いのですが、妻の意見は、私が何か言ったとしても、ほぼ採用されます。
お子さん6歳・4歳のパパ うちも同じで、ママは答えが決まっているけどとりあえずたずねてきて。私が違うことを言っても結局ママの意見が通って、「え、なんで?」となることがよくあります。「じゃあ、なんで聞くんだろう」と思いますね。
りんたろー。パパへの素朴な疑問
お子さん10歳・8歳・4歳・2歳のパパ りんたろー。さんは仕事をバリバリしているから、本当に子育てしているのか?と疑問に思ってしまうことがあります。しているとは思うのですが、特に不規則だったり、休みがとりにくかったりするでしょうし、どう子育てしているの? と気になります。
りんたろー。さん 限られた時間の中で子育てしていますよ。 みなさんの話を聞いて、私も「あるある」と、うなずいていました。
丸山桂里奈さん 他のパパからこんな話を聞くことはあまりないので、いろいろ聞いておきたいですね。
パパたちの話を聞いて、ママたちの感想は
お子さん7歳・4歳・6か月のママ 面白かったです! ママの意見が通る、パパの意見はなかなか叶わないと聞いて、「うちだけかな」と思っていたのですが、同じ意見がありましたね。
お子さん1歳5か月のママ パパ同士で集まって本音を話す機会はあまりないと思うのですが楽しそうに話していましたね。パパはあまり家で本音を言わないから「そういうことを思ってるんだ」と思いました。
りんたろーさん、子どもが生まれてこの1年で大変だったことは?
りんたろー。さん 「すくすく子育て」が始まったころは夜泣きで本当に大変でしたね。夜中の12時に仕事が終わって、次の日は朝5時から仕事なのに、赤ちゃんが夜泣きして起きて。ママに頼りたいけど、ママも一日中の育児で疲れてるし頼れない。赤ちゃんをだっこしながら「いつ寝るの?」と思ったり。どうしたら寝るのかわからなくて、いろいろと調べてもうまくいかない。「5分で泣きやむ」という動画を再生しようとしても、広告が流れて、変なところでイライラしていました。
丸山桂里奈さん りんたろー。さんは、赤ちゃんが夜泣きする中、きちんと仕事もしていましたよ。「すくすく子育て」の現場では「もう、本当に大変で…」と言いやすいと思うけど、ひと言も弱音を吐かなかったですよね。
大変な夜泣きは、どう乗り切った?
りんたろー。さん 丸山桂里奈さんをはじめ、ほかの仕事の現場でも、共演者の人たちが、パパ友・ママ友になりましたね。本音を打ち明けると「そうだよね!わかるわ!」みたいに、楽屋がぼやきの場所になって。うれしかったし、発散にもなりました。
丸山桂里奈さん 一緒に話して気持ちがわかると、「ひとりじゃないんだ」と思えて心強いですよね。
井桁さん、この40年でパパの子育ての悩みに変化はありましたか?
井桁容子さん パパの子育ては当たり前と捉えている男性が増えて、社会の風潮もそうなってきたと感じています。 りんたろー。さんの話にもあったように、パパもママも育児でいちばんつらいのは睡眠不足ですよね。1~2時間しか続けて寝られないことが何か月も続きます。長く続く睡眠不足は、全ての関係をギクシャクさせます。
りんたろー。さん 言う必要のないことばが自分の口から出てしまうこともありますよね。余裕がなくなっているのだと思います。睡眠は大事ですね。
川田さん、みなさんの話で気になったことはありましたか?
川田学さん パパたちは本当に生き生きと話してましたね。やはり、父親同士がパパとして共感し合う場は、とても少ないように思います。りんたろー。さんは、楽屋がそのような場だったということで、とてもラッキーでしたね。 私もささやかな子育て支援活動をしています。その中で、パパたちとの座談会を10年ほどしてきました。10年前は「ママをいかに助けるか」といったテーマで開くことが多かったのですが、この数年はパパたちも子育てに深く関わるようになり、子どもの生活や夜泣きなど、具体的な子育ての場面での悩みをよく話すようになったんです。なので「パパだってつらいんです」とテーマを変えたら、パパたちが生き生きと語っていましたね。 自分の弱音を吐いたり、家や職場ではちょっと言えないことを話せたりする人間関係がもっと必要だと感じます。
親になって変わったことは?
りんたろー。さん まず、見た目が変わりましたね。誰にも気づかれないのですが、最近はひげもそっています。
丸山桂里奈さん 違いますね。育児を通して成長している気がします。
りんたろー。さん 変わったといえば生活リズムです。子どもが早く起きるから早く寝る。育児をして、仕事現場に行くのも早くなるんですよ。どんどん早くなって、てきぱき動いて、生活が正されて。まわりから「人が変わったみたい」と言われています。
「父親になる」って、どういうこと?
お子さん1歳5か月のパパ 子どもが3~4か月のころ、ママから「早く父親になって」と言われたのですが、そのときはママに寝かしつけをしてもらっていて、私はソファでゴロゴロしてたんです。仕事で疲れていて。すると、ママから「私が寝かしつけしているのに、どうしてひとりで休んでるの? もっとほかにできることあるでしょ? パパになってほしいよ!」と。それらの言葉が全部グサグサと刺さりましたね。「ごめんなさい。パパになります」と言いました。
丸山桂里奈さん そこはえらいと思います。ママはどう思ったんですかね。
お子さん1歳5か月のママ パパはふだんからやさしくて、そのときすごく疲れていたのはわかります。でも、激しく泣く子どもをどうにか寝かしつけて、リビングに行ったらゴロゴロして携帯を見ているパパがいたんです。ピリピリして、言ってしまいました。今ではすごくパパらしくなりましたよ。
子どもができたら早く帰りたくなってきた
りんたろー。さん 先輩から「子どもができたら家に帰りたくてしょうがなくなるよ」と聞いていましたが、最初のうちはしっくりきてなくて。「子育て人員として帰らないと」という義務感でしたね。 でも、子どもが成長して、できることが増えてきて、笑顔も増えてきて。笑顔が増えると、「今までのことは間違ってなかったんだよパパ!」みたいに自分が肯定されたと感じます。そのころから、「早くお家に帰りたい」がわかるようになりましたね。
パパが変わったきっかけ
お子さん10歳・8歳・4歳・2歳のパパ 長女(10歳)と次女(8歳)が生まれたころは仕事が忙しくて、ママがほぼ一人で子育てしていました。変わったのは、長男(4歳)が生まれてからです。コロナ禍で家にいる時間が長くなり、寝かしつけ、おむつ、トイレなどをはじめたんです。そこで、やっと「父親になれてきたかな」と。みなさんの話を聞くと、私よりずっと早く父親になれたんだなと感じました。 仕事への考え方も変わりましたね。最短で効率的な仕事のしかたを考えるようになりました。すると、仕事の成果も上がり、今まででいちばん早く帰って育児できるようになってきました。
井桁さん、父親になるには時間がかかるものですか?
井桁容子さん 時間がかかるのは、自然なことだと思います。ママは出産のときに「お母さんになったんですよ」と言われて、体を通して自覚しないわけにはいかない。パパは、関わる時間を通して自覚するようになります。りんたろー。さんがお子さんの笑顔で肯定されたと感じたように、成果を重ねながら自覚するという面があるので、時間がかかるのはたしかだと思います。 やはり、「父になる」「母になる」より「この命をふたりで育てていくためのプロジェクト」と意識するのが大切かもしれません。ママが授乳や産後のホルモンバランスの影響で疲れているなら、パパがその分冷静な対応で子どもの世話をするなど、役割分担できると思います。 りんたろー。さんが、まわりの人から「人が変わったようだ」と言われたのも、夜泣きなど、どうしようもないことをたくさん受け入れていったからでしょうね。そんな経験を通して親になっていくと思います。
りんたろー。さん たしかに、修行感はすごかったです。ほめられると、また自己肯定感が上がります。
頑張り過ぎるパパが増えている?
川田学さん 「やらされている」ではなく「自分もできるだけ育児しなければいけない」という意識を持つパパは、とても増えてきたように思います。一方で、睡眠不足など、当然パパの心身にも限界があります。仕事で「子どもが生まれたから、仕事の時間は半分でいい」とは言ってもらえませんし、働き盛りのころで、いっぱいいっぱいになってしまう。 最近の少し気になる動向と傾向としては、パパの産後うつです。育児に関わるうつの症状に陥ってしまうパパが増加傾向で、気になっています。
丸山桂里奈さん ママが産後うつになるのはよく聞きますが、パパはどうして産後うつになるのですか?
川田学さん 急激な生活の変化の中で、ひたすらやることが増えていくわけです。そこで「本当はこうしたい」「妻からの期待に応えられていない」といったストレスで、パンクしてしまう。先ほどみなさんが「変化についていけなかった」と言っていましたが、環境的な激変が大きいと思います。
りんたろー。さん 「ママにはこれ以上苦労をかけられない」「いとおしい赤ちゃんの存在が原因でこうなっている」と思うと、いろいろわからなくなってきますよね。
丸山桂里奈さん 複雑になっていってしまうのかもしれませんね。
お子さん6歳・4歳のパパ 私は育休から職場復帰したと同時に部署異動になって、新しい仕事をすることになったんです。「育休も取ったし、仕事と子育てをしっかり両立させていこう」という意識を強く持っていたのですが、結局、仕事ばかりの人間に戻ってしまい、ずっと悩んでいました。すると、ふと朝起きられなくなってしまって。そこから、4か月ほど休みをもらいました。 そのときいちばん大変だったのはママに全て負担がいってしまったことです。家事も子育ても全てひとりでやってくれて。そこで初めて、何を最優先すべきかに気づかされました。それからは「仕事も大事だけど、やっぱり家族を大事にしたい」と意識が大きく変わって、今ではほぼ残業せずに早く帰って、子どもとの時間を作るように意識しています。
頑張り過ぎてつらくなったら、どう乗り切る?
川田学さん 本音が話せるような機会・環境を持つことが必要です。子育て支援の場所が増えて、パパが参加できるものも増えてきました。 本当につらくなったときには、休まなければよくなりません。どのくらい休んだらいいのかは人それぞれですが、そこで考えるのは優先順位だと思います。子どもが生まれる前にできたことと同じようにはできないわけです。 家庭を中心とした生活をすると、子どもが力強く育って、あとでいろいろ助けてくれるようになることもあります。何が大切か自分の中で優先順位を整理しなおすことができると、落ち着いてくると思います。
りんたろー。さん 私は、「すくすく子育て」がきっかけで、保育園などの一時預かりを知りました。「そういうものがあるなら行ってみよう」と思って、利用してみました。 そのとき、家に赤ちゃんがいない状態で、何も気にせずにゆっくり眠れたんです。この1年なかったことで、すっきりして、景色も、ママや赤ちゃんに対しての接し方も変わりました。「こんなによい支援があるんだ」「日本の保育ってすごい」と思いましたね。支援を知っているかどうかで、全く違います。つらくなる前に支援を探して利用してみては、と思います。
次回、子育て本音トーク後編へ続きます。
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