子育て中、周囲からはなかなか理解されにくい悩みを抱えていることもあります。「生きづらさ」には、さまざまな理由がありますが、今回は「メンタルヘルス不調」について取り上げます。
メンタルヘルス不調のある親や、その子どもたちのサポートに関わってきた蔭山正子さん。また、メンタルヘルス不調などの経験がある当事者や、その家族の方に、すくすくファミリーとして参加いただきました。生きづらさのある子育てについて一緒に考えていきます。
専門家: 蔭山正子(大阪大学 教授/公衆衛生看護学/保健師)
今回のテーマについて
まず、うつ病経験のあるママ(お子さん1歳)の体験談を紹介します。
幼いころから、ずっと生きづらさを感じてきました。周囲からは「困りごとなんてどこにあるの?」と見えているようですが、実際は違います。子どものころから、みんなが普通にできることができないことに苦しんできました。 小学校のころから「黒板を写せない」が当たり前です。文字の読み書きや計算、運動が非常に苦手で、騒がしい教室は苦痛の場で、まわりから「勉強ができない子」と決めつけられ、冷たい視線を感じ続けていました。大人になってから、発達障害のひとつである「ADHD」と診断されました。 高校時代に自分に合った勉強法を編み出して、猛勉強して大学に進学しました。その後、作業療法士として就職しましたが、仕事をうまく進めることが苦手で、次第に心身が追い詰められたんです。重いうつ病とパニック障害を併発し、後に発達障害の二次障害であることがわかりました。物心が付いたときから、ずっと周囲から「バツ」をつけられて、もう「マル」をつけてあげられない、どう頑張っても「私はバツなんだ」と心がくじけたんだと思います。 7年に及ぶ闘病と治療を経て、うつ病は寛解、その後、子どもが生まれました。今はうつ病が再発しないように、自分の特性とつきあいながら、心身に負担をかけない工夫を重ねています。例えば、苦手なことを書き出して、その対策をリスト化しました。聴覚や視覚に過敏があるので「スーパーマーケットに行くときは耳栓を持っていく」、睡眠障害があるので「夜7時には部屋を暗くして刺激を減らす」などです。 とはいえ、想定外のことも多いのが子育てです。夜泣きもひとつひとつが闘いです。ぎゃん泣きが続くと、聴覚過敏のため頭が真っ白になることがあります。
番組には、ほかにもメンタルヘルス不調のある子育ての悩みが届いています。このママのように発達障害からくるものなど理由はさまざまですが、共通するのは「生きづらさ」です。
メンタルヘルス不調は、脳の働きがうまくいっていない状態
蔭山正子さん 「メンタルヘルス不調」は、精神疾患や精神障害を含む幅広い概念ですが、心の不調ではなく、脳の働きがうまくいっていない状態をいいます。それが「生きづらさ」につながることがあるのです。
―― メンタルヘルス不調は、どんな人でもなる可能性がありますか?
誰でも、ちょっとしたきっかけでメンタルヘルス不調になりえる
回答:蔭山正子さん 誰でもなりえます。ただ、例えば性格のせいでなるわけではなく、ちょっとしたきっかけでメンタルヘルス不調になってしまうことがあります。私自身もメンタルヘルス不調になったことがあります。 妊娠・出産のころは、ホルモンの変動があり、そういった部分に引きずられて、産後うつなどのいろいろな変調をきたしやすい時期でもあります。
子どもが成長する中で、社会との接点が増えることに不安を感じる…
「あなたはひとりじゃない」つながれる場所をつくる取り組み
最後に
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