産後の心と体(1)体の不調
出産と同時に始まる子育て。でも、ケアが必要なのは赤ちゃんだけではありません。産後のママの心と体は想像以上のダメージを受けています。
今回は、助産師の経験をいかして産後の母子ケアを推進している市川香織さんに、体の不調について教えてもらいました。
講師: 市川香織(東京情報大学 准教授/助産師/母性看護学)
産後、体が元の状態に戻るには時間がかかる
妊娠中、3kgぐらいになる赤ちゃんをおなかの中で育てて、体には大きな負担がかかっています。そして、出産で全身のエネルギーを使います。
それらを乗り越えた産後の体は、すぐに元の状態に戻るわけではなく、回復するまでおよそ6〜8週間かかるといわれています。
産後にみられる体の症状
産後の体は、回復までに時間がかかるだけでなく、産前にはなかった症状がみられることがあります。
※症状には個人差があります
産後まもない時期には、悪露(おろ)と呼ばれる子宮からの出血や、後陣痛という子宮が元の大きさに戻るときの痛みが出ることもあります。
産後の骨盤のゆがみによる尿漏れのほか、痔(じ)や便秘になる人もいます。
昼夜関係なく続く授乳やだっこにより、肩こり、腰痛、けんしょう炎に悩まされる人も少なくありません。
母乳により乳房が張ってきて、初期の段階では乳房の痛みを感じることもよくあります。
帝王切開などをされた人は傷の痛みもあります。
体の不調を感じたら
体の不調を感じたら、まずは出産した施設の産科医や助産師に相談しましょう。そのほか、新生児訪問のとき、地域の保健センターや子育て世代包括支援センター、助産院などでも相談できます。
助産院での相談
助産院ではどのような相談ができるのでしょうか。
横浜市のある助産院の様子を見せていただきました。産後の体の不調に悩むママたちが訪れています。
この日、赤ちゃんがうまく飲みきれなくて母乳がたまり、乳房が腫れあがったというママがやってきました。「痛みどうですか?」など、ママの話を聞いて、乳房を冷やしたり、マッサージをしたりして痛みを和らげます。次第に母乳の通りもよくなっていきました。
そのほか、体へ負担のかかりにくい授乳のしかたなども教えていきます。
こうした授乳トラブルの対応は、年間2000件以上あるそうです。
自分の体を優先して、遠慮せずに相談を
産後のママは、自分が疲れているのに、赤ちゃんを第一に考えて自分のことを後回しにしがちです。でも、疲れが重なると回復も遅れます。まずは自分の体を優先して、遠慮せずに相談することが大事です。
Eテレの育児情報番組「まいにちスクスク」でこれまでに放送した内容はこちら
PR