子どもの絵、ちゃんと描けるようになる?
子どもが描く絵は、とても印象的ですよね。
でも、何を描いているのかわからない場合もあります。子どもは、絵をちゃんと描けるようになるのでしょうか。
子どもの心にくわしい、子安増生さんに教えていただきました。
子安増生さん
甲南大学 文学部 教授
はじめは線が残るのがおもしろい
子どもが物を持って描けるようになると、まず手を動かします。動かした跡が残ることがおもしろいのです。
最初は一方方向にしか動かせませんが、やがて戻ることができるようになります。戻ることができると円のような閉じる図形ができるのです。ですが、表現の能力がまだついていません。絵を描くためには、腕をうまく使うことや、絵をどう描くか思考することが必要になります。それでも、子どもなりに、ちゃんと物をよく見ています。
子どもが注目しているところが絵になる
2~3歳の子どもが人を描くと、胴体がなかったり、耳がなかったりすることがあります。実は、世界中の子どもたちが、ある時期にこんな絵を描くのです。
これを「頭足人(とうそくじん)」と呼んでいます。目と口と手足が基本となるのは、子どもが目・口・手足に注目しているためです。それらは“動くもの”なんです。目はパチパチ、口はパクパク、手足も動きます。でも胴体は動かない。だから描かれていないのです。子どもたちは、動くものだけを描いているわけです。
子どもが一番注目する部分は人の顔
中でも子どもが一番注目する部分は「人の顔」です。生後6か月までの時期に、赤ちゃんがどんなものに注目するかを研究したところ、人の顔の絵がいちばんだったのです。顔はずっと見つめられていて、目も口も動く。そういうところを見ているわけです。
後の部分はだんだんと付け足させていきます。子どもが描いた絵に足りないものがあっても「耳がないね、鼻がないね」と言わず、いずれ出てくることを待つのがよいと思います。
子どもが胴体をわかっているか確かめる
子どもが胴体のない絵を描いたとき、胴体がわかっているかを確かめる質問があります。それは「おへそを描いてね」と言ってみることです。このとき、顔の中におへそを描けば、顔と胴体が一体であるという認識です。
足の間に描いた場合は、足の間に線を一本引けば、顔と足の間に胴体があるということになります。聞いてみると、子どもが考えていることがわかっておもしろいですよ。
親ができること
まだ言葉が十分発達していない子どもにとって、絵を描くことは自分の表現の手段です。親は、まずは絵を描く場所をきちんと用意してあげましょう。そして、子どもが描いた絵をあまり批評せず、「よかったね、いい絵だね」と褒めてあげてください。そうすれば、子どもたちはどんどん絵を描いていきます。幼児期は、絵のことで心配することはないと思います。
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