発達障害のある子の就学と小学校
就学先の選択肢
発達障害のある子が小学校に上がるとき、4つの選択肢があります。
まずは、大勢の子とともに学ぶ「通常の学級」です。担任の先生と相談をしながら、できる範囲で配慮を受けられます。
個別の支援を手厚く受けたい場合は、状況に応じて3つの選択肢「通級指導教室」「特別支援学級」「特別支援学校」があります。これらの「特別支援教育」は、将来の自立と社会参加を目指し、それぞれの子どものニーズに対応するためのものです。
<通級指導教室>
ふだんは「通常の学級」に在籍しながら、必要に応じて指導を受けることができます。
多くの時間は通常の学級で過ごし、週に数時間、別の教室へ移動して、苦手な音読の指導を受けたり、社会性を学ぶためのグループ活動をしたりするなど、子どもにあった指導を受けます。
<特別支援学級>
発達障害のある子や、知的障害のある子など、障害の種類によってクラス分けされた少人数の学級です。子どもの状況や保護者の要望に応じて、特別なカリキュラムを組んで学習することもできます。
基本的には、特別支援学級で過ごしますが、校内の「通常の学級」へ移動し、同じ学年の子どもたちと交流する機会もあります。
<特別支援学校>
1クラス最大6人の少人数制で、バリアフリー化されているなど、施設も整っています。専門性の高い教員の指導を受けられますが、学校の数が少ないため、ほとんどの子どもたちは地域から出て通うことになります。
就学相談について
入学先に迷う親子のために、各自治体では就学相談を行っています。子どもと保護者が、専門の相談員に進学の不安を相談できる場です。原則として、子どもとその保護者の意向は尊重されますが、最終的には地域の教育委員会が進学先を決定します。
どういう教室の形式がよいのかという問題もありますが、教育内容の研究も大事だと思います。例えば、学習障害のある子に対してどういう教育をするのか、といった研究もやるべきだと思います。 アメリカの場合は、例えば計算が困難な子どもに「何が好き?」と聞きます。そこで「機械いじりが好き」と言われたら「では、計算機を使いましょう」となります。その上で、計算ができたら「君はすごいね」と声をかける。このように、できることを使って苦手を克服するような教育をするといいます。 この考え方であれば、いろいろなハンディを持つ人たちでも適応できると思いますが、なかなか切り替わらない部分もあり、難しい面もあると思います。 (汐見稔幸さん)
インクルーシブ教育について
今、世界の教育現場では「インクルーシブ教育」が注目されています。“一人ひとりのニーズにあった教育”、“みんなで一緒に学ぶ”、この2つを実現しようとする教育理念のことです。特別な支援が必要な子、ゆっくり学びたい子、たくさん勉強したい子、多様なすべての子どもたちのための教育です。
学校サポーター事業について
親たちのつながりが、教育の現場を変えつつあります。
そのひとつが、東京都八王子市の「学校サポーター事業」です。
学校サポーターは、先生のように授業を行いませんが、子どもたちの学びを助ける有償のボランティアです。特別支援の対象の子どもだけでなく、誰にでもサポートをするのが特徴です。授業だけではなく、休み時間や給食のときも、あらゆることに手を差しのべ、クラスを見守ってくれます。先生たちにとっても欠かすことのできない存在です。
「子どもたちが“助けてもらえるという安心感”を持つことができて、待つことができたり、学習への意欲や取り組みが良くなったり、前向きになったと感じます」 (小学校教諭)
学校サポーターになるためには、いくつかの条件がありますが、500名以上(2018年5月)の人々が登録しています。いまや、学校サポーターは、八王子市内のすべての小学校(中高一貫校を除く)で子どもたちを見守っています。
一斉に授業して、同じことを同じように理解しなさいという教育は、近代社会が生み出した非常に特殊な方法です。本来は、一人ひとりのニーズがあり、それぞれに学びたいテーマがあり、それらを自分のものにしながら発見していく場所が学校です。そのためには、多様な教育の形態が必要だということが、いろいろな形で、ようやく明らかになってきました。 ひとりで悩んでいる親もたくさんいると思いますが、みなさんが少しずつ声を出していくことで、新しい形が見えてくる。そういう時代が始まったのではないかと思います。 (汐見稔幸さん)
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